抗生物質耐性菌への画期的対策で緑膿菌や大腸菌の成長を阻害ー最新研究

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抗生物質が効かない耐性菌の増加が近年懸念されている。抗生物質に代わる、新たな手段を見つけることが急務だ。

ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」に今年発表されたDaniel Zhitnitsky氏らの研究では、抗生物質に代わって細菌の成長を阻害する新たな手法が発見された。

それは、遷移金属と有機酸(例えば「銅」+「酢」)の組み合わせによる相乗効果だ。

耐性菌増加でポスト抗生物質時代へ

抗生物質は現代医療のかなめだ。臨床現場のみならず、家畜の飼料や作物の保護にも幅広く利用されている。しかし抗生物質が成功し、幅広く使用されることで、抵抗性を持つ細菌の出現が促されている。ここ10年で多くの病原菌が多剤耐性を持った系統を生み出している。

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2014年に世界保健機関(WHO)が発表した報告によると、21世紀に抗生物質が役に立たなくなる「ポスト抗生物質時代」が到来する可能性は十分現実味を帯びているという。抗生物質が効かなければ、ちょっとした怪我やありふれた感染症で死に至る危険がある。

抗生物質の使用を減らす1つの方法は、代替手段を用いることだ。

先人たちはこのような代替手段を何千年もずっと用いてきた。

抗生物質に代わる手段

遷移金属

周期表中の遷移金属

例えば古代エジプト(BC2000年)では、水を消毒したり食物を保存するために銅や銀が使われていた。ペルシャのキュロス大王(~BC600年)は銀の器で運ばれていない水を飲むことを拒んだという。近代医学の父ヒポクラテスは遷移金属の抗細菌効果に気付いており、傷の治療に銀を含む軟膏を用いた。

現代でも、遷移金属は医療器具のコーティングや、傷・やけどの治療などに用いられている。また、作物・果樹・花などでは、銅による抗細菌処理が日常的に行われている。

しかし遷移金属の利用は、その効果やコスト・毒性・土壌や貯水池への悪影響などのために、特定の状況に限られている。

有機酸

酢を使った保存食品、ピクルス

一方、環境により優しい代替手段は、酢の主成分である、酢酸基を含む有機酸だ。

有機酸も何百年にもわたって使われてきており、現在でも、最も広く食料保存に用いられている。

しかし、遷移金属と有機酸は、それぞれ単独では抗細菌活性が弱い。

Daniel Zhitnitsky氏らの研究では、安価で安全で調達しやすい代替手段を見つけるために、この2つを組み合わせた相乗効果について調べた。

遷移金属+有機酸の効果は絶大!

結果をまとめると・・・

・有機酸は細菌の細胞内への遷移金属の流入を増加させることによって、遷移金属の抗細菌作用を増強させた。

・最大での1000倍の細菌成長阻害効果があった。

・大きな相乗効果が見られた細菌には、大腸菌・サルモネラ菌・緑膿菌・コレラ菌など重要な病原菌が含まれる。

・食料の保存や作物の保護の戦略を、簡単に改善できるかもしれない(例:酢の保存食に亜鉛や銅を加える、作物保護用の銅のスプレーに有機酸を加えるなど)。

・有機酸を組み合わせることで金属の使用量を減らせれば、健康や環境にとって好ましい。

・生物医療、農業、経済、環境分野で大きな可能性を秘めている。

管理人チャールズの感想

病原菌の薬剤抵抗性は人類の深刻な脅威だと思います。あらゆる抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」のニュースも時々見かけます。

農業における害虫の農薬耐性の進化などと同様、原理的に細菌の抵抗性の進化は抑えがたいと思うので、単純な抗生物質投与に代わる何らかの手段の開発が必要でしょう。

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クレジット表記・原著論文(Creative Commons Attribution 4.0 International License)

Zhitnitsky, D. et al. The highly synergistic, broad spectrum, antibacterial activity of organic acids and transition metals. Sci. Rep. 7, 44554; doi: 10.1038/srep44554 (2017).

https://www.nature.com/articles/srep44554

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