のどや鼻にいる微生物群がインフルエンザ予防に役立つ?マイクロバイオーム最新研究

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私たちの鼻やのどにいる微生物群は、ひょっとするとインフルエンザに対する免疫と関わっているのかもしれない。米科学誌「プロスワン」に2019年1月に掲載されたKyu Han Lee氏らの論文では、のどや鼻にいる微生物叢(マイクロバイオーム)の種類が、インフルエンザの感染しにくさと関連していることが示された。

インフルエンザの予防策

インフルエンザは世界の主要な疾病である。現在用いられている最善のインフルエンザ予防策はワクチンだが、近年ワクチンの有効率は低~中程度であり、かつワクチンの接種率は低くとどまっている。また、ワクチン(予防接種)の有効率は、シーズンや年齢層、ワクチンの接種履歴などによってばらつきが見られることも報告されており、その原因や改善策などについての研究が進められている。

アメリカとカナダにおけるインフルエンザワクチンの有効率(インフルエンザ予防接種の効果)(Lewnard, J.A.; Cobey, S. Immune History and Influenza Vaccine Effectiveness. Vaccines 2018, 6, 28. https://doi.org/10.3390/vaccines6020028 [cc]の図に日本語を追加)

Kyu Han Lee氏らは、補完的なインフルエンザの予防手段として、ヒトの体内にすむ微生物叢(マイクロバイオーム)の可能性に着目して本研究を行った。

マイクロバイオーム(微生物叢 [びせいぶつそう] )とは?

マイクロバイオームのさまざまな働き (What is the microbiome?  Protima Amon et al. BMJ http://dx.doi.org/10.1136/archdischild-2016-311643 [CC] の図に日本語を追加)

ヒトの体内や体表には100兆もの微生物(細菌・ウイルス・菌類・原生動物など)が生息していると推測されている。このようなヒトの体にすむ全ての微生物の遺伝子全体をマイクロバイオームと呼ぶ。大部分の微生物は腸にいるが、皮膚や口腔、膣など様々な場所に存在している。

マイクロバイオームはヒトの免疫システムを制御したりするなど、様々な影響を与えることが近年明らかにされつつある。過去の研究では例えば、ネズミを抗生物質で処理する(=マイクロバイオームをかく乱)とインフルエンザ感染後の死亡リスクが上昇することなどが報告されている。

本研究の概要

2012年から2014年の間、ニカラグアで家族内でのインフルエンザ感染について調査された。インフルエンザに感染しているメンバーを含む家族が最大13日間にわたって追跡された。ニカラグアの144世帯の家庭の計717人の参加者から、鼻とのどのマイクロバイオーム計3101サンプルが回収された。データの分析は、調査登録時にインフルエンザウイルスに感染していなかった537人について行われた。

調査結果

参加者から採取した鼻とのどのマイクロバイオームは5つのタイプに分類された。このうち1つのマイクロバイオームのタイプは、インフルエンザへの感染しにくさと有意に関連していた。また、このタイプのマイクロバイオームは幼い子供にはあまり見られなかった。

本研究ではマイクロバイオームとインフルエンザ感染の因果関係については示されていない。しかし、さらなる研究によって、マイクロバイオームがインフルエンザ予防などに役立てられる可能性があるのではないかと著者らは考えている。

管理人チャールズの感想

ヒトの体内にすむ微生物の働きに関する興味深い研究でした。ただ本研究については、マイクロバイオームが積極的に免疫の機能に関わっているのではなく、単に免疫作用の違いによって鼻やのどの微生物相が変化しているだけといったように、因果関係が逆という可能性もあるかもしれません。マイクロバイオームについては今後のさらなる研究で一体どんなことが明らかにされていくのか、とても楽しみですね。

マイクロバイオームとヒトの健康については、次の記事でまとめています。

⇒ 驚異のヒト体内共生微生物、健康のためにあなたが知るべき5つの事実ーマイクロバイオームとは?

抗生物質の副作用ーマイクロバイオームへの悪影響で免疫力低下

原著論文・クレジット表記(Creative Commons Attribution 4.0 International License

The respiratory microbiome and susceptibility to influenza virus infection K.H.Lee et al. PLOS ONE https://doi.org/10.1371/journal.pone.0207898

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