ヒトの頭蓋骨で「黄金比」を発見?【最新研究】

美しい比率といわれる「黄金比」は、植物の葉の配列など自然界でさまざまな例が見られるようです。

今回、学術誌「Journal of Craniofacial Surgery」に2019年9月に掲載されたRafael J. Tamargo氏らの論文では、人間の頭蓋骨でも黄金比のような関係が見つかったと発表されています。

黄金比とは?

↑葉の配列が螺旋(らせん)状になる植物の例(credit: Max Ronnersjö[CC])

黄金比(英語:golden ratio)とは、次の関係を満たす比のことです。

(大ざっぱに一桁の整数比で近似すると8:5くらいになります)

簡単に言うと、ある線を長い方と短い方に分割するとき、

長:短の比(a : b)が、線全体:長い方の比(a+b : a)と同じになるように分けた比のことです。

古くから芸術家や科学者を魅了してきた比率のようです。

黄金比(a/bの値)はギリシャ文字Φ(ファイ)で表され、その値は1.618033…と無限に続くようです。

黄金比の歴史

黄金比の発見は、古代ギリシャにまでさかのぼれるようです。

黄金比の発見者としては

・無理数を見つけたとも言われるピタゴラス学派のヒッパソス

・パルテノン神殿のアテナ・パルテノス像を作ったといわれる彫刻家ペイディアス(フェイディアス)

などが候補として挙げられているようです。

また、「幾何学の父」と呼ばれるユークリッドも黄金比に触れています。

黄金比はレオナルド・ダ・ヴィンチの絵に使われていた?

↑パチョーリの著作「神聖比例論」の中で描かれているヒトの顔

ルネサンス時代には、イタリアの数学者パチョーリが黄金比に関する著作「神聖比例論」を残していますが、この本ではレオナルド・ダ・ヴィンチが挿絵を提供したようです。

そのこともあってか、ダ・ヴィンチが自分の絵画に黄金比を応用していたと考える人も少なくないようです。

黄金比について数学的に解説した動画

参考動画|グリネル大学の数学教授Marc Chamberland氏による黄金比の概要と数学・数式についての解説。ダ・ヴィンチのモナリザやダリの絵画にも軽く触れています。(難易度高め、英語のみ)

参考動画|TED:フィボナッチ数列についての解説。黄金比との関連にも触れています(日本語字幕あり

フィボナッチ数列とは1、1、2、3、5、8、13、21、34、55・・・と第3項以降が直前の2つの項の和になっている数列で、隣り合う項の比は黄金比に収束するようです。

数学で自然界を説明できる?

黄金比は、螺旋(らせん)と関連している

↑縦横の辺の長さが黄金比でできた長方形は、黄金長方形と呼ばれるようです。

↑黄金長方形から正方形を取り出した残りも黄金長方形になり、この操作は無限に続けることができます。↑このようにして、黄金螺旋という対数螺旋の一種を近似的に導き出すことができるようです。

 ↑オウムガイの殻の断面(クレジット:Chris 73[CC])

このようにオウムガイの殻は黄金螺旋に一見似ているため、黄金比の例として引き合いに出されることが多いようです。

しかし、実際に計測した結果に基づいて、オウムガイは対数螺旋ではあるものの黄金螺旋ではないと批判する論文も出ています。

植物に見られる「らせん」とフィボナッチ数・黄金角との関係

円周を黄金比で分割(黄金分割)して得られた角度を黄金角と呼びます。

黄金角は約137.5度で、植物の葉序(葉の配列)などにとって重要だとの指摘があるようです。

参考動画(パート1)|松かさ(まつぼっくり)・パイナップル・花びらなど植物に見られるらせん状構造について、フィボナッチ数との関連から考察しています(日本語字幕あり

参考動画(パート2)|パート2では黄金角を含めて考察しています(日本語字幕あり

黄金比のその他の例

↑魅力的とされる顔のさまざまな比率が黄金比と関連していると指摘した研究もあるJovana Milutinovic氏らの論文[CC]より引用)

植物の葉序以外にも、黄金比が関わっている可能性のある私たちの身の回りの具体例として、心臓の生理・解剖学的特徴や、歩行のメカニズム、顔の美的特徴などが報告されているようです。

さらには、原子物理学、細胞の形・成長・配置、赤血球の構造、ヒトゲノムにおけるヌクレオチドの頻度などにおいても、黄金比の存在が指摘されているようです。

ヒトの頭蓋骨で黄金比を発見?

今回、Rafael J. Tamargo氏らの研究では、ヒトとその他6種の哺乳類の頭蓋骨を調べた結果、ヒトの頭蓋骨で黄金比に近い比率を発見したようです。ヒト以外の哺乳類では黄金比から離れた値が計測されたようです。

 

↑本研究の結果Rafael J. Tamargo氏らの論文[CC]より引用)

脳の複雑化、大脳のサイズの増大といった人間の進化に関連して、黄金比が何らかの意味を持っている可能性がある、と論文の著者らは考えているようです。

管理人チャールズの感想

黄金比に関わる興味深い研究でした。

今回、記事にしておきながら申し訳ないのですが、黄金螺旋・黄金角・フィボナッチ数の関係がいまいち理解できておらず、正直いまだに混乱しています。詳しい方がおられましたら、わかりやすく教えて頂けると幸いです(笑)

また、本研究については、どういう基準で哺乳類を選んで順番に並べているのかがよくわからないのと、黄金比の1.618…という値からそれなりにずれているように見えることから、正直、ちょっとこじつけと思われないこともない・・・というのが率直な感想です。

多くの俗説・都市伝説を含めて、自然界の現象や身の回りのもの・芸術などについて黄金比で単純に説明しようとする試みについては、様々な批判もあるようで、研究者の間でも議論が行われているみたいですね。

いずれにしても、黄金比についての今後のさらなる研究が楽しみです。

Rafael J. Tamargo, Jonathan A. Pindrik. Mammalian Skull Dimensions and the Golden Ratio (Φ). Journal of Craniofacial Surgery, 2019; 30 (6): 1750 DOI: 10.1097/SCS.0000000000005610

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