顔の「微表情」とは、無意識のうちに本音の感情がかすかに一瞬現れるもので、怒りや喜び・悲しみなどの感情が読み取れるという。この微表情を人工知能で自動分析しようとする試みが、近年注目されている。セキュリティ分野や臨床診断、法廷での科学捜査など様々な応用が期待される一方で、AIによってあなたの感情さえも監視される社会が、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。2018年10月に学術誌「applied sciences」に掲載されたYue Zhao氏らの論文では、顔の微表情を機械学習により自動で認識する新たなフレームワークが提案されている。
(アイキャッチ画像クレジット:Yue Zhao et al. Necessary Morphological Patches Extraction for Automatic Micro-Expression Recognition [CC])
顔の「微表情」(micro-expression)とは?
微表情をとらえた画像。数字の単位はミリ秒。画像クレジット:Wen-Jing Yan et al. CASME II: An Improved Spontaneous Micro-Expression Database and the Baseline Evaluation [CC] より引用
微表情とは、とても短い時間(たいてい、0.04~0.2秒)、無意識のうちに、かすかに生じる顔の表情で、本当の感情(本音)を隠そうとするときに現れると考えられている。
微表情研究の第一人者といわれる心理学者ポール・エクマン(Paul Ekman)氏のサイトでは、普通の表情と微表情の違いを次のように比較して説明している。
普通の表情(macro-expression) | 微表情(micro-expression) |
見ると明らかにわかる、いわゆる表情 | しばしば見逃されるか、間違って解釈される |
0.5~4秒続く | 0.5秒以下しか続かない |
話している内容やトーンと表情が一致 | 隠された感情が無意識に表れる |
微表情は非常に短い時間で消えてしまい、しかもわずかな動きしかないため、特別な訓練を受けた人であっても、肉眼で認識することはなかなか難しいようだ。
万国共通の感情は6つある?
顔の表情と感情の関係については、進化論で有名なダーウィンも考察している。近年では、例えばポール・エクマン氏は実験で、西欧圏と非西欧圏の人がどちらも共通に顔の表情から、①怒り ②恐れ ③嫌悪 ④驚き ⑤喜び ⑥悲しみ の6つの感情を認識できることを示したという。
微表情の動画から、感情を分析してみる
参考動画:MICRO EXPRESSIONS in 4K – LIE TO ME Style Analysis (Patryk Wezowski)(英語のみ):Patryk Wezowski氏による、微表情の分析。7つの動画の微表情とその感情について解説している。
VideoⅠ(1:04~)怒りと驚き VideoⅡ(2:40~)怒りと驚き VideoⅢ(4:21~)怒りと恐れVideoⅣ(6:09~)軽蔑と喜び VideoⅤ(7:30~)軽蔑と悲しみ VideoⅥ(9:32~)嫌悪と悲しみ VideoⅦ(11:44~)怒りと嫌悪と驚き
微表情で嘘が見破れる?
参考動画:FOX TVシリーズ『Lie to me 嘘の瞬間』予告編(FoxTVdrama)(日本語あり):
心理学者ポール・エクマンを主人公のモデルとしたと言われる、微表情をテーマとしたサスペンスドラマの予告編(※フィクションです)。微表情は意識的に隠すことができないと言われており、このドラマのように、嘘を見破るツールとしての応用研究も実際に行われている。
人工知能による微表情の自動分析
Yue Zhao氏らが示したフレームワークの模式図(Yue Zhao et al. Necessary Morphological Patches Extraction for Automatic Micro-Expression Recognition [CC]の図を引用)
近年、コンピュータ能力や画像・動画処理技術が進歩したことで、微表情を機械学習によって自動認識・分析する試みが注目を集めている。
顔認識テクノロジーの進歩
参考動画:”Facial recognition technology will change the way we live” (The Economist)(英語のみ)
顔認識テクノロジーが私たちの生活をどのように変えるかについての解説動画。顔認証テクノロジーは、パスワードとしてiPhoneのロック解除や銀行のアカウント認証に使われたり、日常的な購買プロセスや監視システムのために使われるのみならず、その人の性的指向(ストレートかゲイか、など)や遺伝性疾患を明らかにすることさえ可能だという。
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The Guadian紙: New AI can guess whether you’re gay or straight from a photograph
顔画像から性的指向を判別するスタンフォード大学の研究:Deep neural networks are more accurate than humans at detecting sexual orientation from facial images
顔から遺伝子疾患を判別する人工知能「DeepGestalt」の論文:Identifying facial phenotypes of genetic disorders using deep learning
顔認識テクノロジーによる監視社会・中国の現状
参考動画: China: “the world’s biggest camera surveillance network” (BBC News)(英語のみ)
中国ではすでに、人工知能を利用した多数のカメラが街中に広く設置されており、顔の自動認識や年齢・民族・性別の推定などを行うことができる。プライバシーのあり方について、私たちは根本的な見直しを迫られているのかもしれない。
コンピュータによる微表情の自動分析によって、セキュリティ分野やうつ病などの臨床診断、科学捜査など様々な応用が期待される一方で、AIが私たちの感情さえ監視する社会の到来も近いと言えるかもしれない。
管理人チャールズの感想
本音の感情が顔に無意識に表れるという「微表情」についての興味深い記事でした。純粋な心理学研究の域を超えて、社会への応用がすでに始まっているようですね。近年のテクノロジーの目覚ましい進展には本当に驚かされます。どんな技術もそうだと思いますが、使い方次第で、有用な道具にも、恐ろしい凶器にもなり得るんだろうな、と改めて強く感じました。
人工知能や監視社会、顔などに関連するテーマは以下の記事でもご紹介しています。




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