痛みや不安・恐れを感じないという、世にも珍しいスコットランドのキャメロンさんは、自分が特別な存在であることについ最近まで気づかなかったようだ。英医学雑誌「British Journal of Anaesthesia」に2018年3月に掲載されたAbdella M.Habib氏らの論文では、痛みをほとんど全く感じない珍しい女性の例が報告され、その原因と考えられる遺伝子変異についても特定された。
60代半ばになるまで、自分が他人と違うことに気が付かなかった
参考動画 | ITV News 本研究で紹介された、痛みを感じない女性・キャメロンさんについてのニュース報道(英語のみ)
元講師で、2児の母であるジョー・キャメロンさんは、自分が痛みを感じないということをいつも自覚していた。過去には、腕を骨折したまま、しばらく気が付かないこともあったという。キャメロンさんが60代半ばになって手術が必要になり鎮痛剤を拒んだときに初めて、医者がキャメロンさんの特別な体質に気が付いたという。キャメロンさんは出産時を含めて、鎮痛剤を使用した記録が全くなかった。「私は超人ではありませんよ」とキャメロンさんは笑顔で語っている。
肉が焼ける匂いで、自分の腕のやけどに気付く
参考動画 | Nine News Australia キャメロンさんについての別なニュース報道(英語のみ)
肉が焼ける匂いで、自分の腕のやけどに気が付くという、キャメロンさん。激辛の唐辛子も平気で食べられるようだ。
傷の回復が早く、不安や恐怖も感じない
キャメロンさんは痛みに気付かないため、けがをすることも多いが、そういった傷は素早く回復して、傷跡が残ることもほとんどないという。
キャメロンさんの家族については、母親・娘は普通に痛みを感じるが、父親・息子はキャメロンさんと似ていて、痛みを感じない傾向がみられるようだ。
キャメロンさんは話し好きで、楽観的で幸せそうだ。キャメロンさんには不安やうつ傾向がほとんどみられないという。
長年にわたり忘れっぽく、鍵の置き場所などをよく忘れてしまうらしい。また、交通事故に遭ったときのような危険な状況でも、決してパニックになることがないという。
2つの遺伝子変異を特定
キャメロンさんのDNAを調べた結果、2つの遺伝子変異が見つかった。
1つの遺伝子変異は、脳内麻薬物質などを分解する上で重要な、FAAH(脂肪酸アミド加水分解酵素)という酵素の活性を低下させる、すでに知られた一塩基多型(SNP)だった。マウスの実験では、FAAHの活性を失わせることにより、痛みを感じにくくなったり、傷の回復が早まったり、不安が低減したり、短期的な記憶障害が生じたりすることなどが知られている。
もう1つの遺伝子変異は、FAAH遺伝子の近くの偽遺伝子で見つかった微小欠失だった。今回の研究でこの偽遺伝子(既知の遺伝子と似ているが、その機能を失っているようにみえるDNA領域)はFAAH-OUTと名付けられた。
この遺伝子変異の影響を確認するため、キャメロンさんの血液中のアナンダミド(脳内麻薬物質)などの濃度を測定したところ、通常の人よりも高いことがわかった。やはり、キャメロンさんの場合、アナンダミド(脳内麻薬物質)などを分解するFAAHが十分機能していないようだ。
痛みを和らげる新たな治療法の開発
FAAHについては、鎮痛作用などに関連するとしてすでに研究が行われてきたが、最近行われたFAAH阻害剤の臨床試験はうまくいかなかったという。しかし、今回新たに発見されたFAAH-OUT遺伝子などの知見をもとにさらに研究を進めることで、手術後の痛みや慢性痛、不安障害などの新しい治療法を開発できるかもしれない。
管理人チャールズの感想
ご本人は否定されていますが、キャメロンさんは、まさに「超人」と呼ぶにふさわしい存在だと思いました。キャメロンさんが長らく自分の特別な体質に気が付かなかったことから、潜在的には、キャメロンさんと同じような特徴を持った人が他にもいるかもしれないそうです。自分が該当すると思われる方は、ぜひ名乗り出てあげて下さい。
余計なお世話かもしれませんが、これだけ有名になってしまったキャメロンさんのプライベートな生活が心配です・・・(病院に監禁されてしまう、巨額の利益を生み出す新薬開発のために拉致されてしまう、など)
以下の記事もおすすめです!
コメント