2017年話題になった生物学の最新ニュース・論文まとめ10選

Altmetric社が2017年に影響力の大きかった論文トップ100のランキングを発表しています。

当記事ではその中からオンラインで無料閲覧できる2017年話題になった生物学関係の研究論文を10本ご紹介します。

第63位 3Dプリンターで作った人工卵巣でマウスが出産に成功

3-D printed ovary might help restore fertility

参考動画:Newsyによる本研究の報道(英語)
3Dプリンターによってすでに耳や腎臓などの作成が試みられています。
本研究では3Dプリンターで作られた人工卵巣がマウスの体内で機能することが確認されました

今後はヒトの不妊治療などへの応用も期待されます。

※2019年にはイスラエルの研究チームが3Dプリンタで人工心臓の作成に成功しています。

⇒  3Dプリンタで人工心臓の作成に成功、患者自身の細胞などを素材にー最新研究

卵子についての研究は次の記事でも触れています。

⇒ 「卵子の数は決まっている」との定説覆す新発見、卵巣の幹細胞で不妊治療の将来に光明かー最新研究

Laronda, M., Rutz, A., Xiao, S. et al. A bioprosthetic ovary created using 3D printed microporous scaffolds restores ovarian function in sterilized mice. Nat Commun 8, 15261 (2017). https://doi.org/10.1038/ncomms15261

第24位 プラスチックを分解するガの幼虫を発見

Wax worms may help solve big environmental issue

参考動画:Newsyによる本研究の報道(英語)
環境への負荷が懸念されているプラスチックですが、レジ袋などに使われるポリエチレンを分解できるガの幼虫が発見されました。本研究の知見が今後プラスチックごみ問題などに応用できる可能性も期待されます。
※2019年の研究では、イルカ・クジラ・アザラシなどの体内でマイクロプラスチックが発見されています。

⇒ マイクロプラスチックを海洋哺乳類の体内で発見、調査した全個体でー英最新研究

Bombelli, Paolo, et al. “Polyethylene Bio-degradation By Caterpillars of the Wax Moth Galleria Mellonella.” Current Biology : CB, vol. 27, no. 8, 2017, pp. R292-R293. https://doi.org/10.1016/j.cub.2017.02.060

第17位 インスタグラムの投稿写真からAIがうつ病を診断

Computers see depression clues in Instagram pics

参考動画:Newsyによる本研究の報道(英語)

写真や動画を共有するSNS「インスタグラム」への投稿写真から投稿者がうつ病かどうかを、人工知能(AI)プログラムが人間の一般開業医よりも高い精度で診断できたと発表されました。

うつ病の人は例えば、より暗くて青色・灰色が強い写真を投稿する傾向があったようです。

本研究の成果は今後うつ病などの早期発見に役立つことが期待されます。

※うつ病やAI関連の研究については以下の記事でも取り上げています。

⇒  うつ病は脳の構造を変えるー大規模調査で判明、最新脳科学研究

⇒ あなたの顔に一瞬現れる「微表情」からAIが本音の感情を読み取る!?ー最新心理学研究

Reece, A.G., Danforth, C.M. Instagram photos reveal predictive markers of depression. EPJ Data Sci. 6, 15 (2017). https://doi.org/10.1140/epjds/s13688-017-0110-z

第15位 がんの原因となる遺伝子変異の3分の2はDNAの複製エラーに起因

What Causes Cancer? Cancer Mutations and Random DNA Copying Errors

参考動画:論文の著者Tomasetti氏らが、がんの原因に関する本研究の成果をわかりやすく解説しています(英語)

がんの原因となる遺伝子変異を引き起こす要因は3つ(環境要因、遺伝要因、細胞分裂時のDNA複製エラー)ありますが、変異の3分の2はDNAの複製エラーに起因していたようです。

DNAの複製エラーは不運としか言えないため、著者らはがん予防の自助努力をしたにも関わらずがんになってしまった患者の方々は罪悪感を感じるべきではないと主張しています。

※ナノテクノロジーを用いた新しい治療法の可能性については次の記事でも触れています。

⇒ 体内で極小ナノロボットが活躍!動画で最新医療ナノテクノロジーの応用例を紹介

Tomasetti, Cristian, et al. “Stem Cell Divisions, Somatic Mutations, Cancer Etiology, and Cancer Prevention.” Science (New York, N.Y.), vol. 355, no. 6331, 2017, pp. 1330-1334. http://doi.org/10.1126/science.aaf9011

第10位 人工子宮で羊の胎児を育てることに成功

Scientists grow lamb fetus inside artificial womb

参考動画:Tech Insiderによる本研究の報道(英語)

本研究では 「バイオバッグ」と呼ばれるポリエチレンの袋で、羊の胎児を育てることに成功したと発表。将来的にはヒトの早産児への応用を目指しているようです。

※早産児に関連する研究については次の記事でも取り上げています。

⇒ 人工知能AIで早産児の脳の発達度を評価、脳波を測定して自動分析ー最新研究

Partridge, E., Davey, M., Hornick, M. et al. An extra-uterine system to physiologically support the extreme premature lamb. Nat Commun 8, 15112 (2017). https://doi.org/10.1038/ncomms15112

第8位 羽に覆われた恐竜のしっぽを琥珀中で発見

Dinosaur's Feathered Tail Found Remarkably Preserved in Amber | National Geographic

参考動画:National Geographicが本論文の琥珀画像などを取り上げています(英語)

この恐竜の羽毛は立体構造まで保存されており、羽毛の進化についての理解が深まることが期待されます。

※化石に関連する研究については以下の記事でも取り上げています。

⇒  卵からふ化直後に琥珀に閉じ込められた1億3千万年前の昆虫を発見!古生物学最新研究

奇妙な形態のカニの化石を発見、「カニとは何か」定義が揺らぐ?ー最新研究

Xing et al., A Feathered Dinosaur Tail with Primitive Plumage Trapped in Mid-Cretaceous Amber, Current Biology (2016). http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2016.10.008

第7位 子供や若者の肥満が過去40年で10倍に増加

WHO Warns of Child Obesity Epidemic, With Tenfold Increase In 40 Years

参考動画:VOA Newsによる本研究の報道(英語)

世界保健機関(WHO)などが、世界200カ国から1億人以上の身長と体重のデータを分析した結果を発表。肥満の増加傾向に対し、ジャンクフードへの課税や健康的な食事の推進など対策を呼びかけています。

※近年、ヒトの腸内細菌などの共生微生物(マイクロバイオーム)が肥満と関連していることを示す研究もあります。

⇒ 驚異のヒト体内共生微生物、健康のためにあなたが知るべき5つの事実ーマイクロバイオームとは?

その他ダイエットに関連して次のような研究も発表されています。

⇒ 朝食を食べることはダイエットには役立たない可能性、最新研究が示唆

⇒  「悪い脂肪」は「良い脂肪」に変わる!?脂肪細胞の新発見で肥満治療に期待

NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC),. (2017). Worldwide trends in body-mass index, underweight, overweight, and obesity from 1975 to 2016: a pooled analysis of 2416 population-based measurement studies in 128·9 million children, adolescents, and adults.. Lancet (London, England), 390 (10113), 2627-2642. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32129-3

第6位 ドイツの自然保護区の飛行昆虫が約30年で4分の1以下に減少

Number of flying insects may be declining

参考動画:USA TODAYによる本研究の報道(英語)

世界的な昆虫の減少が科学者らの関心を集めています。昆虫は送粉者あるいは鳥や他の動物の食料などとして食物網において重要な役割を果たしており、生態系への影響が懸念されています。

※2019年にも世界的な昆虫の減少を報告した論文が注目を集めています。

⇒ 2019年前半に話題になった生物学などの最新論文ニュースまとめ12選

Hallmann CA, Sorg M, Jongejans E, Siepel H, Hofland N, Schwan H, et al. (2017) More than 75 percent decline over 27 years in total flying insect biomass in protected areas. PLoS ONE 12(10): e0185809. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185809

第4位 ヒト胚にCRISPR遺伝子編集を用いて遺伝病の原因遺伝子を修正

🇺🇸 Breakthrough made in repairing disease-causing human embryo gene | Al Jazeera English

参考動画:Al Jazeera Englishによる本研究の報道(英語)

本研究では、ヒトの受精卵にCRISPRゲノム編集を用いて、遺伝性心筋症の原因となる遺伝子変異を除去したと発表。倫理的問題を含めて議論が巻き起こっています。

※ゲノム編集・CRISPRの概要や応用例については、以下の記事でも解説しています。

⇒ ゲノム編集・CRISPRとは?図や動画でわかりやすく簡単に原理・応用例や倫理的問題を解説

世界初の遺伝子編集ベビーを誕生させた中国研究者、自ら語る【動画】

遺伝子ドライブとは?原理・メカニズムの要点を簡潔に解説(動画・図説あり)

Ma, H., Marti-Gutierrez, N., Park, S. et al. Correction of a pathogenic gene mutation in human embryos. Nature 548, 413–419 (2017). https://doi.org/10.1038/nature23305

第1位 脂肪や炭水化物の摂取と心臓血管疾患・死亡率との関連についての調査結果

世界18カ国から35~70歳の10万人以上の食生活について大規模に調べた結果、次のようなことなどがわかりました。

★炭水化物の摂取量が高いことは高い死亡リスクと関連

★脂肪の摂取量が高いことは低い死亡リスクと関連

★飽和脂肪の摂取量が高いことは、低い脳卒中リスクと関連

論文の著者らは、炭水化物や脂肪について従来の食事ガイドラインを見直すべきと主張しています。

この論文自体の問題点や論文解釈の注意点などについて詳しく指摘しているサイトもありましたのでリンクを載せておきます。

Degan M, Mente A, Zhang X, et al. Association of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. Lancet. 2017. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(17)32252-3

※2018年には、この研究結果とは違って「炭水化物の摂取量はほどほどがよい」との研究がThe Lancet Public Healthに発表され、話題となりました。詳細は下のリンクから2018年のまとめをご覧ください。

2018年のまとめはこちら!

⇒ 2018年に話題になった生物学などの論文ニュースまとめ10選

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