うつ病は脳の構造を変えるー大規模調査で判明、最新脳科学研究

うつ病は脳の構造を変えることが、史上最大規模の調査でわかった。

ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」に今週掲載されたXueyi Shen氏らの研究では、大量の脳の画像データを解析して、うつ病患者と健常者の間で脳の構造に違いがあることを発見した。

うつ病の原因はまだはっきりしていない

2012年のWHOの報告によると、うつ病に苦しむ人は世界で3億5000万人と推測されている。

うつ病の原因となるメカニズムの解明は急務で、MRIという技術を使いヒトの脳の画像を解析する研究が幅広く行われている。

たとえば、うつ病患者では健康な人より脳の偏桃体などが小さいという研究報告もあるが、そうではないという報告もあり、一貫した結果は得られていない。

これまでの研究ではサンプルサイズが小さすぎたり、サンプリング手法に問題があった可能性がある。

8590人の脳画像データを用いた大規模な研究

イギリスのUKバイオバンク(研究目的でヒトに関する試料などを保管する機関)では、イギリス国内から50万人もの被験者のデータが集められている。

今回、Xueyi Shen氏らの研究ではこのUKバイオバンクから8590人の画像データを利用し、うつ病患者と健常者間で脳の構造に違いがあるかどうかを調べた。

最新技術で脳のネットワークを調査

うつ病患者の脳の異常は解剖学的に1つの領域だけに限られていないため、うつ病の原因は脳の複数領域の接続に関わる脳のネットワークの異常である可能性がある。

脳の様々な領域をつなぐ白質という構造について調べるため、最新技術「拡散テンソル画像(DTI)」を利用した。

マサチューセッツ工科大学マクガヴァン脳研究所動画:脳の白質を示した拡散テンソル画像(DTI)

うつ病患者では脳の白質について変化がみられた

調査の結果、うつ病患者は健常者より脳の白質の統合性が低下していることがわかった。

白質の統合性の低下は、うつ病患者の脳における感情の制御や報酬系の障害を反映している可能性がある。

このことから、うつ病は心の状態だけでなく、脳にも物理的に影響を与えていることが示唆された。

※近年、ヒトの腸内細菌などの共生微生物(マイクロバイオーム)がうつ病と関連していることを示す研究もあります。詳しくは次の記事をご覧ください。

⇒ 驚異のヒト体内共生微生物、健康のためにあなたが知るべき5つの事実ーマイクロバイオームとは?

管理人チャールズの感想

脳を解析する手法が進歩したおかげで、様々な病気と脳の関係が具体的に明らかにされつつあるようですね。こうした研究成果がうつ病の効果的な診断や治療・改善にできるだけ早くつながることを願っています。

主要参考文献・出典情報(Creative Commons)
Shen, X., Reus, L.M., Cox, S.R. et al. Subcortical volume and white matter integrity abnormalities in major depressive disorder: findings from UK Biobank imaging data. Sci Rep7, 5547 (2017). https://doi.org/10.1038/s41598-017-05507-6

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