毎日当たり前のように見ている自分の手ですが、脳は必ずしも正確に認識できていないのかもしれません。
米科学誌「プロスワン」のSarah D’Amour氏らの論文によれば、サイズを様々に修正した手の写真を見てもらう実験の結果、自分の手のひらの長さは正確に認識している一方、手の甲は実際より長く認識してしまう傾向が判明したようです。
脳はどのように体を認識している?
脳の各領域が、体のどの部位と対応しているかはすでにある程度分かっているようです。
↑触角などの感覚情報を受け取る、大脳の一次体性感覚野(中心後回)
(クレジット:Database Center for Life Science[CC])
しかし、体の各部位の実際の大きさと、対応する脳の領域の広さにはギャップがあるようです。
↑ペンフィールドの体性感覚野の地図(クレジット:OpenStax College[CC])。
たとえば手や唇・舌から情報を受け取る脳の領域は、かなり広くなっているようです。
この脳の地図を元に、3次元でヒトの体を再構築した模型の例がこちら↓
↑脳内の身体イメージを表したペンフィールドのホムンクルス(小人の意味)
(クレジット: Mpj29[CC])
このように、脳内で認識している人体像は、現実のものと違って歪んでいる可能性もあるのかもしれません。
手の甲の長さの認識は、手のひらよりも不正確だった
今回、Sarah D’Amour氏らの実験では、さまざまなサイズに加工した自分の手の写真を見てもらうことで、被験者が脳内で手の大きさをどのように認識しているのか調べたようです。
↑被験者が脳内で認識している手の長さ。
左が手の甲[hand]、右が手のひら[palm]で、縦軸は正確な長さとの差異(平均)。
実験の結果、手の甲は、手のひらよりも長さの認識が不正確で、実際よりも長く認識される傾向があったようです。
手の向きによる違いも調べられましたが、長さについては有意な効果は見られなかったとのこと。
また、男性と女性で手のサイズ認識が違うということも、今回の実験ではなかったようです。
手のひらの長さが手の甲よりも正確に認識できる理由は、繊細な感覚受容器が集まる指先(手のひら側)を正しい位置におくことが重要だからかもしれない、と論文の著者らは考えているようです。
管理人チャールズの感想
脳が自分の体をどのように認識しているかは、興味深いテーマですね。
パソコンでキーボードを入力したり、ピアノの演奏をするときなど、自分の手を甲側から見る機会は多いと思いますが、その際、視覚は意外とあてにならないのかもしれません。
スポーツ選手や音楽家の方などが精緻な身体動作を行うためには、見た目に頼るだけでなく、自分の内的感覚を調整することもきっと大切なのでしょうね。
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