なぜ女性はハイヒールを履くのだろう?進化生物学的な観点から長年の謎が解明された。
心理学学術誌「フロンティアーズ・イン・サイコロジー」に昨年掲載されたDavid M. G. Lewis氏らの研究では、女性がハイヒールを履いた時に腰の湾曲(カーブ)が特定の角度(45.5度)に近づくと、男性からより魅力的と評価されることがわかった。
ヒールによって腰の湾曲の角度が変化している
(David M. G. Lewis氏らの論文 の図を改変)
ハイヒールの歴史
参考動画:The Telegraph “The history of the heel | Fashion History”(英語のみ)
英紙「デイリー・テレグラフ」の上の解説動画によれば、ハイヒールの歴史は16~17世紀のペルシャ軍の男性にまでさかのぼれるという。戦いの際、馬具の鐙(あぶみ)に足を安定させるのにヒールが役立ったようだ。
それから17世紀に、強さや権力の象徴となったハイヒールは、ヨーロッパの身分の高い男性たちに取り入れられた。例えばフランスのルイ14世は、ハイヒールを履くことで背を10cmほど高くして、さらに宮廷の男性には底の赤いハイヒールを履くよう命令し、政治的権力を誇示したという。
続いて、女性が服装を男性化しようとする試みの中でハイヒールを取れ入れた。18世紀のフランスやアメリカの革命で貴族制が否定されると、ハイヒールはすたれた。19世紀中頃までに写真やポルノが流行ったこともあり、ハイヒール人気が復活。
第2次世界大戦後の1950年代にはスティレットヒール(金属製で短剣のように頑丈で細くとがったハイヒール)が流行。マリリン・モンローは、片方のハイヒールだけを削って左右の靴の高さをアンバランスにすることでセクシーな歩き方を実現したと言われている。1960年代には、もともと子供の女性用に作られた、高さが低めのキトンヒールが流行。1970年代にはディスコの流行もあって、底の厚いヒールが現れる。1980~1990年代以降、現在に至るまで、優れたデザイナーによるハイヒールへの人気は続いている。
なぜ女性はハイヒールを履く?―長年の謎
女性がハイヒールを履く理由については、これまでにさまざまな仮説が考えられてきた。
例えば、
★メディアによってハイヒールが性的なものと結び付けられている、という仮説
★ハイヒールを履くと歩き方が男性にとってより魅力的に映る、という仮説
などがあるが、はっきりとした理由はいまだにわかっていない。
ハイヒールの新しい仮説:腰の湾曲の角度と性的魅力
David M. G. Lewis氏らの論文 (2015) の図を引用
2015年に発表されたDavid M. G. Lewis氏らの研究では、女性の腰の湾曲の角度が45.5°の時に最も男性から魅力的だと評価されることがわかった。
45.5°という角度は、女性の妊娠時の適切な姿勢・重心や、背骨の損傷を防ぐことと関連していると考えられている。
また未発表の最新研究によると、魅力的な男性の前では、女性の腰の湾曲の角度が大きくなるとの結果も得られているという。
ハイヒールは腰の湾曲の角度を変えて性的魅力を高める!
David M. G. Lewis氏らの研究では、冒頭のような2枚の写真を男性が比較して魅力を評価してもらう実験を行った。
この実験では、
★ハイヒールそのものを写真から除外
★写真を加工して足の長さや身長の影響も排除
★写真のため、ハイヒールによる歩き方の変化は無視できる
実験の結果、腰の湾曲の角度が45.5度近くに変化した時にのみ、ハイヒールを履いた女性がより魅力的だと判定された。
そのため本研究によって、女性がハイヒールを履く生物学的な理由の1つは、腰の湾曲の角度が変わることで性的魅力が高まるからだと言えるだろう。
管理人チャールズの感想
女性のファッションについて生物学的に考察した研究でした。ハイヒールを履くことで性的魅力は高まるようですが、一方で、足や腰に無理な負担がかかったり、転倒のリスクが増したりとデメリットもありえるように思いますので、ハイヒールを履かれる際はご注意下さいね!
男女や顔に関する心理学研究などは以下の記事でも取り上げています。
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