女性が実際より美しく見えてしまう「夜目遠目笠の内」ということわざを実証するような研究結果が発表されています。
英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で2020年1月に発表されたDiana Orghian氏らの論文によれば、不完全な顔写真を用いた実験の結果、他人の顔は、情報が不完全な時の方が魅力的に見える可能性が示されたようです。
つまり、私たちは他人の顔の欠けている情報を補うとき、良い方向で妄想を働かせる傾向があるようです。
私たちは、他人の顔の美しさを正確に評価できているのか?
夜雨宮詣美人図(出典:東京国立博物館 研究情報アーカイブズ)
「夜目遠目笠の内」(読み:よめとおめかさのうち)の意味:
夜見る時や、遠くから見る時、また、笠をかぶった顔の一部分を見る時は、姿かたちがはっきりしないので、実際より美しく見えるということ。多く、女性にいう。
(精選版 日本国語大辞典より引用)
不完全な写真の方が、他人の顔は魅力的に見えた
※以下の図はDiana Orghian氏らの論文より引用
本研究では、オリジナルの顔写真(上図左端)と、不完全に加工した顔写真(ぼやけた写真、左側3分の1の写真、小さい写真、の計3種類)を用意して、被験者に顔の魅力を評価してもらう実験をしました。
その結果、不完全に加工した3種類の顔写真の方が、オリジナルの顔写真よりも魅力的だと評価されたようです。
ただし、これらの加工写真では、シワやニキビといったマイナスの特徴が隠されたために魅力的だと評価された可能性もあるため、追加でさらに次のような確認実験が行われました。
ランダムにピクセルを取り除いた加工写真と、顔半分の加工写真を用意することで、人為的な要因で特定のマイナスの特徴(シワなど)が隠れてしまうことがないような条件を作りました。
実験の結果、これら2種類の加工写真も、オリジナルの写真より魅力的だと評価されたようです。
つまり、情報の不完全な顔写真の方が、元の顔写真よりも魅力的と評価される結果となりました。
他人の顔の不完全な情報を補うときには、ポジティブなバイアスが生じる
↑不完全に加工した顔写真では、魅力の評価にポジティブなバイアスが生じた。
つまり、他人の顔の魅力について不完全な情報しか得られない場合には、良い方向に推量する傾向があるようです。
ちなみに、ヒトの顔写真の代わりに、イヌの顔や、花、風景の写真で美しさを評価してもらった場合には、このようなポジティブなバイアスは見られなかったとのことです。
また、評価を行う人が男性の場合の方が、バイアスは強かったようです。
管理人チャールズの感想
不完全な情報を補う際の認知バイアスに関する興味深い研究でした。
女性の場合、化粧をせずにすっぴんで外出する際などにもマスクをつけることがあるようですが、本研究の結果から単純に推測するなら、女性の顔の魅力はマスクをつけることで高まるような気がします。
しかし、ある日本の研究によれば、マスクをつけることで、不健康な印象がもたらされたり、もともと美しい女性では逆に魅力が損なわれたりする可能性もあるそうです。(Miyazaki & Kawahara, 2016)
一方で、怖い都市伝説として知られる「口裂け女」はマスクをつけて魅力を高めていることは明らかですし、顔を隠すマスクの使い方は、状況次第でプラスにもマイナスにもなるのかもしれませんね。
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