脳に電極を埋め込まれてサイボーグ化したラットを、ヒトが念じるだけで操縦できるという、SFじみたテクノロジーがすでに現実化しています。英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に2019年2月に掲載されたShaomin Zhang氏らの論文によれば、ヒトとラットの脳をワイヤレスに接続する「ブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)」により、ヒトの脳波でラットの動きを操作することに成功したようです。
サイボーグ化したラットの動きを「マインドコントロール」(脳波でコントロール)する様子
参考動画|ScienceVio:複雑な迷路で「サイボーグ・ラット」の動きを脳波で操作する実験の様子
脳とコンピュータをつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)」
脳と脳の直接のコミュニケーションは、人々にとって、特に言語によるコミュニケーションに困難を抱える人々にとって、長らく夢であり続けてきました。ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の出現によって、脳とコンピュータの間で情報をやりとりすることなどが可能になりつつあります。すでに、脳の活動を解読して外部デバイスをコントロールすることに成功しています。また、反対に、コンピュータが生み出した情報を使って、脳の特定の領域の機能を調節することも可能なようです。
参考動画|NPR:ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の概要をわかりやすく解説した動画。ここでは身体に装着したエクソスケルトンを、心の中で念じるだけでコントロール(=マインドコントロール)することに成功している。(英語のみ)
関連記事 ⇒ 脳で機械を直接操作するBMIで将来「心のプライバシー」が問題に?最新動画集
脳と脳をつなぐ「ブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)」
このようなブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を組み合わせることによって、脳と脳を接続するブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)を作り出すことができます。ブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)を利用すれば、人間同士の脳をつなげるだけでなく、人間の脳から他の生物の脳へ情報を伝達することも可能となります。最近の研究では、すでに人間の脳によってネズミの尻尾を動かしたり、ゴキブリの動きを操作することに成功しています。
2015年にはゴキブリを脳波で操作することに成功している(Guangye Li et al. Brain-Computer Interface Controlled Cyborg: Establishing a Functional Information Transfer Pathway from Human Brain to Cockroach Brain [cc] より引用)
本研究のブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)の概要
本研究では、操縦者が左の腕または右の腕を動かそうと想像する(意図する)ことが、それぞれラットを左または右に向かせる指令に対応し、まばたきをすることがラットを前進させる指令に対応していたようです。
本研究のブレイン・ブレイン・インターフェースの概要(Shaomin Zhang氏らの論文 [CC] より引用)
まず操縦者の脳波の信号が無線でコンピュータに送られ、動きの意図が解読されます。そして解読結果が制御指令としてラットの背部の刺激装置に伝わり、ラットの脳に電気刺激が与えられることによって、ラットが操縦者の指令に従って動くという仕組みのようです。
冒頭で紹介した動画の通り、本研究では、ヒトが心の中で念じるだけで、サイボーグ化したラットをうまく操作して、複雑な迷路さえもスムーズにクリアすることに成功しています。将来的には、ヒトの脳と脳をつないで双方向のコミュニケーションが可能になる、と著者らは考えているようです。
管理人チャールズの感想
脳と脳をつなぐブレイン・ブレイン・インターフェース(BBI)技術の急速な進歩を象徴する、印象的な研究でした。そう遠くない将来、テレパシーに近いような技術が現実化することは、ほとんど確実だろうなと私も思っています。大変面白い世界が期待できる一方で、悪意を持って他人の脳を改変したり、思考内容を盗聴したりといったテクノロジー犯罪への不安はやはり拭えませんね。
ブレイン・マシン・インターフェースの将来や懸念事項については次の記事でも詳しく取り上げています。
⇒ 脳で機械を直接操作するBMIで将来「心のプライバシー」が問題に?最新動画集
fMRIと機械学習の組み合わせによって、ヒトの脳内イメージの画像化にもすでに成功しています。
⇒ 人工知能AIが脳を解読して、心の中のイメージの画像化に成功
脳以外の身体を含む人体機械化の最新テクノロジー動画は次の記事でまとめています。
⇒ サイボーグ技術が現実に!機械と人間の融合ー最新テクノロジー動画集
ブレインマシンインターフェースの最新研究には次の記事でも軽く触れています。
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