第6感?ヒトが地磁気を知覚できる証拠、脳波から発見ー最新研究

人間の新しい「第6感」を示唆する科学的証拠が見つかった。米科学誌「eNeuro」に2019年3月に掲載されたConnie X. Wang氏らの研究によれば、渡り鳥やミツバチなど多くの動物がナビゲーションに利用している地球の磁場を、ヒトでも感じ取れることを示す証拠が脳波の計測で得られたという。

アイキャッチ画像クレジット:Connie X. Wang et al. Transduction of the Geomagnetic Field as Evidenced from Alpha-band Activity in the Human Brain [CC]

参考動画 “人間は磁場を感じ取れるのか?” | Veritasium(英語のみ):論文の著者たちや実験設備の紹介を交えながら本研究の概要をわかりやすく解説している。

多くの動物が地磁気を利用している

バクテリア、ミツバチ、鳥類、サケ、カメ、イヌなど様々な動物が地磁気を感じ取る能力を持っており、ナビゲーションなどに利用していることが知られている。しかし人間が磁場を感じる能力については、多くの実験が行われてきたものの、これまで明らかになっていなかった。

参考動画 “How foxes use magnetic fields to catch prey” – BBC Four(英語のみ):キツネは、厚い雪の下の獲物を狩る際に地磁気を利用している可能性がある。北東の方向にシャンプして狩りをするときに成功率が高いという。

参考動画  “Lost in migration”  | nature video(英語のみ):コマドリの一種は正しい方角へ渡りを行うために地磁気を利用しており、人為的なラジオ周波数帯の電磁波の影響を受けるという。

参考動画 ”We Don’t Know: Magnetoreception” | Science Magazine(英語のみ):多くの動物が地磁気をナビゲーションに利用している。地磁気をどのように感じるかについては論争が続いており、マグネタイト(磁鉄鉱)やクリプトクロムと呼ばれるタンパク質などが地磁気センサーの候補に挙がっているという。

今回、Connie X. Wang氏らの研究では、電磁波シールドで覆われた暗室において、地磁気と同じ強さで方向が変化する磁界を人工的に発生させ、被験者の脳波を調べた。

画像クレジット:Connie X. Wang et al. Transduction of the Geomagnetic Field as Evidenced from Alpha-band Activity in the Human Brain [CC]

その結果、特定の方向の磁気変化に対して、脳波が変化した(アルファ波の強度が低下した)。このようなアルファ波の強度が低下する現象は、視覚・聴覚などさまざまな刺激に対し発生することが知られている。そのため、今回の実験では、ヒトが地磁気強度の磁気に対して、無意識のうちに生理的に応答したと考えられるという。

参考文献・出典論文

Connie X. Wang, Isaac A. Hilburn, Daw-An Wu, Yuki Mizuhara, Christopher P. Cousté, Jacob N. H. Abrahams, Sam E. Bernstein, Ayumu Matani, Shinsuke Shimojo and Joseph L. Kirschvink. Transduction of the Geomagnetic Field as Evidenced from alpha-Band Activity in the Human Brain. eNeuro 18 March 2019, 6 (2) ENEURO.0483-18.2019; https://doi.org/10.1523/ENEURO.0483-18.2019 

 東京大学のプレスリリース(日本語)はこちらです ⇒ https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400111625.pdf

管理人チャールズの感想

人間にも磁気を感じ取れる能力があるらしい、というとても興味深い研究でした。確かに、これだけ多くの生物が地磁気を利用していることを考えれば、人間が感じ取じ取れても全く不思議ではないように思います。

脳についても、どんどん新しい知見が明らかになりつつあるようで、大変楽しみな研究分野です。それと同時に、人為的な磁場のかく乱(さまざまな電磁波の利用)や自然の磁場の変動(最近注目されている、北磁極の原因不明の急速な移動など)がどのように生物に影響を及ぼすのか、気がかりでもあります。

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