体内で極小ナノロボットが活躍!動画で最新医療ナノテクノロジーの応用例を紹介

極小のナノロボットを体内に入れて病気の治療などを行う「ナノ医療」(ナノテクノロジーの医療への応用)が、近年注目を浴びています。当記事では実在するナノロボット・ナノマシンなどのさまざまな最新テクノロジーを動画でご紹介します。

アイキャッチ画像クレジット[cc]:Zhiguang Wu et al. A swarm of slippery micropropellers penetrates the vitreous body of the eye

※当記事執筆者はナノ医療の専門家ではありませんので、学術・医療分野などにおける正確・厳密な情報を求められる方は、記事最後に記載している論文など一次資料を直接ご覧下さい。

ナノテクノロジーとは?

ナノテクノロジーとは、下図のように非常に小さい「ナノメートル(nm)」単位の構造を扱う技術です(「ナノ」はもともとギリシャ語で「小人」の意味)。

ナノ材料(1nm~100nm)の例と大きさの目安。分子やウイルス・細菌などと比較S.Panneerselvam et al. Nanoinformatics: Emerging Databases and Available Tools  の図 [CC] を改変)

ナノテクノロジーの起源については諸説あるようですが、一説では、1959年に物理学者のリチャード・ファインマン氏が講演でナノスケール領域の可能性に言及したことが始まりのようです。

比較的新しい「ナノ医療」分野では、ナノロボットによって、早期の病気の診断・体内の特定の部位を狙った薬の輸送・がんやアルツハイマー病の治療など幅広い応用が期待されています。

ナノテクノロジーの医療分野への応用例(動画集)

↑(The New York Times):幼虫やクラゲの動きにインスピレーションを得て作られたナノロボット。転がったり、泳いだり、ジャンプしたりとさまざまな動きができる。磁力を利用して思い通りの形に操作できるという。薬をつかんだ状態で運んだあと狙った場所で放つ、などの応用が期待できる。

↑(South China Morning Post):血管内で薬を運ぶことを目的としたナノロボット。磁場を動力源としており、さまざまな形・サイズに切断可能。別なロボットでは、ねじれて形を変えることで液体中や曲がりくねった場所を移動できる。

↑(New Scientist):血流中を泳いで薬を運搬するナノマシン。磁力を利用した仕組みで、水泳のクロールの動きが可能になっている。

目の治療

↑(Max Planck Institute for Intelligent Systems):眼のガラス体にある組織内を移動することに成功した「ナノプロペラ」。最小限の手術で網膜の狙った場所にピンポイントで薬を届けることを目的としている。らせん状の尾を持っているため前進できる。磁力で遠隔の操縦・制御が可能。眼の中でスムーズに動けるよう、食虫植物からヒントを得た特殊なコーティングを施している。

関連論文: Zhiguang Wu et al. A swarm of slippery micropropellers penetrates the vitreous body of the eye

↑(Science Magazine):前の動画と同じ、目の特定の部位に最小限の手術で薬を届けるためのナノロボット。ヒトの眼の治療に実用化するまでには、まだ越えなければならない課題がいくつかある。

ナノ目薬で視力矯正

↑(VOA News)イスラエルの研究者が目薬「ナノドロップス」について解説。眼鏡・コンタクトレンズやレーシック手術に代わって、視力を矯正できる可能性があるとのこと。ナノ粒子が光の屈折率を変化させることで視力を改善できるという。※この動画の時点で、ブタの実験ではすでに有効性が確認できているとのことです。

生殖医療・精子の応用

↑(Wall Street Journal):不妊の男性側の原因の一つに、精子の運動性が低いことが挙げられる。人工授精や体外受精という選択肢もあるが、必ずしも有効ではなく、費用も高い。このらせん構造を持つナノロボットは磁力で遠隔操作可能で、精子の移動を助けることで将来不妊治療に役立つ可能性がある。

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↑(Seeker):膣の腫瘍を治療するためのナノロボット。薬を腫瘍まで直接届けるために、ウシの精子に鉄製の装具を備えさせて薬を運ぶ。

がんの治療

↑(Bloomberg):がん治療に使われる薬は、がん細胞だけでなく、標的としていない患者自身の通常の細胞にも悪影響を及ぼす。そのため、薬を局所的にがん細胞にだけ届けられるようなナノロボットは、がん治療の副作用軽減に貢献できる可能性がある。

↑(RT America)前の動画と同じく、がん治療において、薬をがん細胞のみに直接届けるためのナノロボット。DNAの自己集合を利用して自在にナノ構造を作り出す「DNA折り紙」という手法で作られている(下の動画参照)。

DNAを材料としたナノロボットの作り方

↑「DNA折り紙」という技術を用いたナノロボットの作り方の解説動画。長い一本鎖DNAと短いDNA鎖(ステープル鎖)を一緒に混ぜるだけで、自動的に望む形に折りたたまれるとのこと。2次元だけでなく、複雑な3次元ナノ構造を作り出すことも実現できている。

番外編:その他、医療に応用できる微小なロボット

↑(IEEE Spectrum):腸の生体検査を行うためのヒトデ型極小ロボット。温度、ph、酵素などに反応する素材でできている。

↑(Newsy)磁力などに反応して、どんな形にも集合できるキューブ型微小ロボット。微小な手術や薬の配送への応用に期待。

折り紙ロボット

↑ [Massachusetts Institute of Technology (MIT)]:熱によって自動的に起動してタスクを実行した後、自然に消滅(溶解)する「折り紙ロボット」。将来的に人体内での薬の配送や微小な手術などへの応用が期待される。(※このロボットはナノサイズではありません)

マイクロ歩行ロボット

↑(Nature):動力源としてこれまでの磁力に代わって、新たに太陽電池(レーザーを利用)を搭載した歩行可能な極小ロボットの大量生産も可能になりつつある。

関連論文:Marc Z. Miskin et al.(2020). Electronically integrated, mass-manufactured, microscopic robots

主な参考文献・出典論文など
Wu, Z. et al. A swarm of slippery micropropellers penetrates the vitreous body of the eye. Sci. Adv. 4, eaat4388 (2018). https://doi.org/10.1126/sciadv.aat4388

Nikalje AP (2015) Nanotechnology and its Applications in Medicine. Med chem 5: 081-089. https://doi.org/10.4172/2161-0444.1000247

Magdanz, V.; Sanchez, S.; Schmidt, O.G. Development of a sperm-flagella driven micro-bio-robot. Adv. Mater. 2013, 25, 6581–6588. https://doi.org/10.1002/adma.201302544

Alla Katsnelson.(2012) “DNA robot could kill cancer cells” Nature https://www.nature.com/news/dna-robot-could-kill-cancer-cells-1.10047

Miskin, M.Z., Cortese, A.J., Dorsey, K. et al. Electronically integrated, mass-manufactured, microscopic robots. Nature 584, 557–561 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2626-9

※当記事は新しい情報などを元に今後も更新する可能性があります。
【管理人チャールズの感想】
さまざまな応用が期待されるナノロボットですが、健康や環境へのリスクについてはまだわかっていないことも多いと思います。そういった面の研究も含めて、今後のさらなる発展がとても楽しみです。

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