「痩せたければ朝食を食べたほうが良い」との定説に疑問を投げかけるレビュー論文が発表され話題となっています。英医学誌「ブリティッシュ・メディカルジャーナル(BMJ)」に2019年1月に掲載されたSievert氏らのレビュー論文によれば、過去28年間に行われた13件の研究のメタ解析を行った結果、高所得国の成人に関して、朝食を食べることが体重減少に役立っているという説を支持する証拠は見つからなかったようです。
参考動画:Is Breakfast Really Good For You? Here’s What The Science Says | TIME:本研究について報じたニュース動画(英語のみ)
「痩せるには朝食を食べた方がよい」という定説
国際的に多くの機関が肥満への対策や体重管理のために規則的に朝食をとることを推奨しています。しかしこうした推奨の大半は観察研究の結果に基づいており、バイアスの影響などを受けている可能性があるようです。
そこで本研究では、高所得国の大人について、朝食を食べることが体重や一日のエネルギー摂取量にどう影響するのかが調べられました。
本研究の結果
本研究の概要(Sievert氏らの論文 [cc] より引用)
・朝食を食べる人の体重は、食べない人より、平均で約440グラム重かった。
・朝食を食べる人の一日のカロリー摂取量は、食べない人より、平均で約260キロカロリー多かった。
このような結果から、朝食を追加することは、やせるためには良い戦略ではないかもしれないことが示唆されました。朝食を食べることが逆に体重増加につながってしまう恐れもあるため、体重を減らそうとする大人に対して朝食を食べるようにすすめる際には注意が必要とのことです。
食欲に関わるホルモンについて調べた研究などからも、「朝食を抜いたせいで、その日の後半にカロリーを過剰に摂取してしまう」という仮説を支持するデータは得られておらず、逆に、朝食を抜くことは一日のトータルのカロリー摂取量を減らすための有効な手段である(≒朝食抜きダイエットにやせる効果がある)かもしれない可能性が示唆されているようです。
ただし今回レビューの対象となった研究は、バイアスのリスクが高かったり、短期間のフォローアップしか行っていないなど、全体的に質が低かったようです。そのため、本論文の知見については、まだ十分なエビデンスがあるとは言えず、慎重に解釈されるべきとのことです。体重管理における朝食の役割についてしっかり立証するには、より質の高い、長期にわたる研究が必要なようです。
本レビュー論文で調べられた13件の研究の概要を示した図(Sievert氏らの論文 [cc] より引用)
管理人チャールズの感想
「朝食を食べてもダイエットには効果がないかもしれない」という、やや物議を醸しそうな結果を報告したレビュー論文でした。ただし、本論文で調査対象となった研究の質は高くなかったため、結論はまだはっきりと出せない段階であり、鵜呑みにはしない方が良さそうです。また、朝食の栄養面での効果などについてはまた別の問題になりますので、改めて考慮する必要があるかもしれませんね。
※近年、ヒトの腸内細菌などの共生微生物(マイクロバイオーム)が肥満と関連していることを示す研究もあります
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