顔の表情を真似する事は、人間やゴリラだけの特権ではなかったようだ。英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に2019年3月に掲載されたDerry Taylor氏らの研究によると、世界で最も小さいクマ「マレーグマ」は、仲間の顔の表情を正確に真似できることがわかったという。
アイキャッチ画像クレジット:Kabacchi [CC]
世界最小!マレーグマとは?
マレーグマはクマの仲間では最も小さく、体長は100~150cm程度で、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧II類(VU)に分類されている。マレーグマは野外で見つけにくいため、その生態はよくわかっていないが、熱帯雨林に生息し、雑食性であることは知られている。過去のある研究によれば、マレーグマは、繁殖行動以外には、めったに社会的な交流は行わないとされ、主に単独行動のライフスタイルをとっていると考えられる。
注目すべき特徴として、母親が2頭の子供を同時に育てることがよくあるという。子供は生まれて3か月は母親からの十分な保護・世話を必要とし、その間に母親とよく交流するようだ。
参考動画 | Inside Edition イングランドの動物園にて、12週のマレーグマの赤ちゃん(英語のみ)
雪の日のマーネちゃん♪その① 1/14 #マレーグマ #マーネ #東山動植物園 pic.twitter.com/wiRhShQqD7
— ぺっこ (@tomotomotomomo) 2017年1月14日
参考動画:東山動植物園のマレーグマ
人間とゴリラ以外で初!顔の表情を正確にマネする動物
人間は、他個体の表情を模倣することが最も得意な動物だ。他には、たとえばオラウータンやイヌも顔の表情を模倣することが知られているが、人間と同じくらい正確に顔の表情を真似できる動物は、これまでゴリラしか報告されていなかった。
今回、Derry Taylor氏らの研究では、マレーシア・ボルネオの保護施設のマレーグマ22頭の行動をビデオ録画して、遊んでいるときの顔の表情やそのタイミングなどを分析した。
参考動画|Polish Dr Dolittle かわいらしく遊ぶマレーグマ
参考動画 | Science Magazine: 本研究の概要を解説した動画(英語のみ)
本研究で、マレーグマは口を開ける表情を見せたが、その表情は次の2種類に区別できた。
①上あごの門歯が見えるくらい上唇を上げて口を開ける
②上あごの門歯は見えない程度に口を開ける
★マレーグマたちがこの表情をみせるのは、遊び相手とお互いの顔が向き合っているときの方が多かった。
★口を開ける表情は、遊び相手が口を開ける表情を見せた直後に示されることが多かった。
★遊び相手が示す2種類の顔の表情へ反応するときは、同じ種類の表情をみせることが多かった。
このような結果から、マレーグマは遊び相手の顔の表情を正確に真似できることが示唆された。
マレーグマは主に単独で生活をしていると考えられるため、人間のように複雑な社会環境がなくても、顔の表情を生かした複雑なコミュニケーションは発達しうることがわかった。
管理人チャールズの感想
クマが顔の表情を繊細に(?)利用してコミュニケーションをとっているらしいという、面白い研究でした。しかし、口を開ける表情によって、いったい何を伝えようとしているのかは、まだ全く不明のようです。
マレーグマの画像をネット上で探していたら、面白い顔芸が色々と見られるページに遭遇してしまいました↓
http://hamusoku.com/archives/9106771.html ネタ画像でしょうか・・・しかし、おかげでマレーグマの顔の表情の独特の魅力がよくわかりました(笑)。まるで、ぬいぐるみの中に人間が入っているかのようです。その可愛らしさのため、特にマレーグマの赤ちゃんはペットしての需要があるようですが、残念ながら、違法なペット取引やそれに伴う母親の殺害なども起きているようです。マレーグマは絶滅危惧種ですので、保護団体のリンクもいくつか一応ご紹介しておきます↓
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原著論文・クレジット表記(Creative Commons)
Facial Complexity in Sun Bears: Exact Facial Mimicry and Social Sensitivity
Derry Taylor, Daniela Hartmann, Guillaume Dezecache, Siew Te Wong & Marina Davila-Ross
Scientific Reportsvolume 9, Article number: 4961 (2019) https://doi.org/10.1038/s41598-019-39932-6
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