もしあなたが手軽に創造性を高めたいなら、ヴィヴァルディ作曲の「四季」を聞くといいかも知れない。
米科学誌「プロスワン」に今月掲載されたSimone M. Ritter氏らの研究では、幸せな音楽を聞くと創造性が高まることがわかった。
研究の背景
創造性とは?
創造性は、複雑で変化の早い21世紀を生きる上で鍵となる能力だ。
しかしどうすれば独創力・創造力を高めることができるだろう?
昔から、創造性を高めるためのさまざまな手段が研究されてきた。
現代の知見によると、創造力は一部の天才に限られた能力ではなく、標準的な認識の機能として元々備わっているものだという。
創造性の両輪:拡散的思考と収束的思考
創造性には拡散的思考と収束的思考の2つが必要とされる。
〇「拡散的思考」とは、意外な組み合わせを作り出したり、情報を思いがけない形に変換したりすることによって、ある問題について複数の答えを出すことに関わる。
例:レンガの使い道は?→「家を建てる」「塀を建てる」「窓を壊す」「ペン立てとして使う」
〇「収束的思考」とは、ある問題に対する唯一の最適解を導きだすプロセスで、正確性や論理性に関わる。
例:「パソコン、大学、エンディング」の共通点は?→「ノート」
収束的思考は創造的ではないと思われがちだが、多くの学者は創造性にとって必要なものとみなしている。
「モーツァルト効果」の論文をきっかけに音楽研究ブーム
モーツァルト
音楽がヒトの能力にもたらすプラスの効果についての科学研究は、1990年代に「モーツァルト効果」を発表した論文をきっかけとして盛り上がりを見せた。
この論文では、モーツァルトの曲を聞いた被験者は、音楽を聞かなかった被験者よりも空間認識能力が優れていたと報告された。(ただし近年「モーツァルト効果」を否定する論文も発表されている)
しかし、音楽が創造力に及ぼす影響についてはまだあまり調べられていない。
そこで本研究では、ある特定の音楽を聞くことで創造性が高まるかどうかを調べた。
研究の方法
155名の被験者を2つのグループに分けて、創造性を測るための各種テスト等を受けてもらった。
一方のグループは4種類のクラシック音楽(穏やか、幸せ、悲しみ、不安)のどれか1曲を聞きながらテストに回答してもらった。
もう一方のグループは、対照群として音楽がない環境で回答してもらった。
被験者が聞いた楽曲は以下の通り。
★穏やかな音楽:サン・サーンス作曲 / 「動物の謝肉祭」より第13曲「白鳥」
★幸せな音楽:ヴァルディ作曲 / 「四季」より「春」第1楽章
★悲しみの音楽:バーバー作曲 / 「弦楽のためのアダージョ」
★不安な音楽:ホルスト作曲 / 「惑星」より「火星、戦争をもたらす者」
研究の結果&考察
・幸せな音楽(ポジティブな雰囲気で覚醒度合の高い音楽)を聞いているときは、無音状態と比べて、拡散的思考の創造性が高まった。収束的思考には影響しなかった。
・拡散的思考が促された理由は、幸せな音楽を聞くことで柔軟な考えができるようになったからかも知れない。
・音楽は普段の生活に簡単に取り入れることができるので、創造力を必要とするさまざまな場面で有効利用できるだろう。
管理人チャールズの感想
音楽と創造力の関係についての面白い発見ですね。自分の経験としても、落ち込んでいたり切羽詰まった状況ではあまり創造的なアイディアは浮かんで来ない気がします。
今回の研究ではヴィヴァルディの曲が創造性を高めたようですが、他のさまざまな音楽でもどんな効果があるのか気になります。今後のさらなる研究に期待しましょう!
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