このカエルは自種の鳴き声が聞こえないのに、なぜ鳴くのだろう?(写真:Sandra Goutte氏らの論文より)
ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」に先月掲載されたSandra Goutte氏らの研究によると、ブラジルに生息するコガネガエル2種では自種の鳴き声が聞こえないことがわかった。
世界最小級!極小のコガネガエルとは?
写真クレジット:Diogo B. Provete氏(Creative Commons Attribution ShareAlike 2.5)
自種の鳴き声が聞こえないことがわかったのは、極小のコガネガエル属(Brachycephalus)の仲間だ。
体長は1cm程度で派手な色をしており、ブラジルの森林の落ち葉に生息する。
繁殖期にはオスが鳴く。
(※鳴き声は小さくて周波数が高いのでなかなか聞き取りにくいです)
コガネガエルの耳はどうなっている?
コガネガエルの耳には鼓膜がない。
(Sandra Goutte氏らの論文の図を改変)
鼓膜がないカエルは他にも知られているが、今のところ、どのカエルも自種の鳴き声を聞けることがわかっている。
コガネガエルには自分たちの鳴き声が聞こえているのだろうか?
Sandra Goutte氏らの研究の結果、コガネガエルは自種の鳴き声が聞こえていないことがわかった。
コガネガエルは耳の構造が一部未発達で、高い音が聞き取れないようだ。
鳴き声が聞こえないのに、なぜコガネガエルは鳴く?
同種のオスもメスも鳴き声を聞き取れないなら、鳴くことにメリットはない。
また、鳴き声を出すにはエネルギーがかかるし、天敵などに見つかる危険もある。
なぜコガネガエルはいまだに鳴き続けているのだろう?
鳴き声は過去の痕跡(なごり)か?
Sandra Goutte氏の仮説では、鳴き声は過去の痕跡にすぎないのだという。
祖先の生物では役に立っていたが現在では退化した器官を「痕跡器官」という。
ヒトでは例えば
・耳を動かす筋肉
・尾骨
・虫垂(盲腸の先端部)
などが痕跡器官として知られている。
視覚によるコミュニケーション
コガネガエルが鳴く時にはお腹の方が膨らんだりして動きをともなう(上の動画参照)。
Goutte氏らはこうした視覚的なコミュニケーションが、音声のコミュニケーションに取って代わった可能性があると考えている。
コガネガエルは昼行性で、体色はカラフルだ。もともとは鳴き声がメインでそれにともなう動作は副産物だったが、今はそれが逆転したというのだ。
また、コガネガエルは独特のしぐさを行うことも知られている。
もしかしたら、こうした動作も何かのコミュニケーションに役立っているのかも知れない。
コガネガエルは猛毒を持つ!
コガネガエルは猛毒を持っているので、鳴いたとしても天敵に捕食されるリスクは低い。このことも、鳴き声がいまだに残っている1つの理由かも知れない。
まとめ
・コガネガエルは自種の鳴き声が聞こえないのに、オスが鳴くという不思議な生物
・鳴き声はすでに役立たずで、今は鳴く時の動作で視覚的にコミュニケーションしているのかもしれない
・コガネガエルは猛毒を持つので、鳴いたとしても天敵に攻撃されにくい。このこともいまだに鳴き声が残っている理由かもしれない
管理人チャールズの感想
ヒトの指サイズのかわいらしいカエルについての研究でした。この論文では鳴き声にはもはや意味がないと考えているようですが、人間が気づいていないだけで、もしかしたら何かの役には立っているのかも知れないですね。鳴くことの意味について、斬新な仮説が出てくることを期待しています!
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