なぜシマウマが縞模様なのかは、ダーウィンの時代から議論されてきた難問だ。今回、優れた実験により、近年の最有力説を支持する証拠が得られた。米科学誌「プロスワン」に2019年2月に掲載されたTim Caro氏らの研究では、馬に縞模様の服を着せる実験などによって、シマウマの縞模様は吸血性のアブからの攻撃を回避するのに役立っていることが示唆された。
アイキャッチ画像クレジット:T. CARO (2019) [CCBY]
シマウマは何故しましま?様々な仮説
シマウマがしましまである進化生物学的な理由については、150年以上にわたり色々な説が唱えられてきた。しかし本研究を行ったTim Caro氏らは、近年の研究成果を踏まえると、シマウマが縞模様を持つ理由として妥当な仮説は一つしかないと考えているようだ。
シマウマの縞模様についての様々な仮説の例
★カモフラージュ(捕食者に見つかりにくくなる)
Amanda D. Melin et al. Zebra Stripes through the Eyes of Their Predators, Zebras, and Humans [CC]より引用
シマウマの捕食者であるライオンの視覚では、人間の視覚と比べて縞模様の解像度が低い。さらに、通常狩りを始める夕暮時や夜間には、縞模様の識別はより困難になる。そのため、シマウマの縞に、捕食者がシマウマを見つけにくくなるようなカモフラージュ効果があるとは考えにくい。
★捕食者を混乱させる
シマウマの縞模様は混乱効果を助長するパターンではない。さらに、ライオンが獲物としてシマウマを好んでいる事実からも、縞模様に混乱効果があるとは考えにくい。
★同種他個体へのシグナル(社会的な利点がある)
縞模様を持たない馬と比べて、縞模様を持つ馬がよりグルミーングを行う等ということはないため、縞模様に社会的な利点があるとは考えにくい(?)※
※根拠としている書籍の内容を確認できないため、詳細は不明です(記事作成者)
★温度調節
水が入った樽を様々な色・模様で覆い、内部の温度を測定した実験
Gábor Horváth et al. Experimental evidence that stripes do not cool zebras [cc]より引用
水入りの樽を使った実験により、縞模様には、灰色と比べて内部の温度を下げる働きはないことが示されるなど、温度調節説を否定するような研究が複数ある。
★アブなどの吸血昆虫に対する防御
この仮説を支持する証拠が近年得られている。アブなどの吸血昆虫はシマウマにとって致命的な病気を媒介することが知られており、縞模様は、主に吸血昆虫に対する防御として進化したという説が有力視されつつある。
本研究での実験結果
Tim Caro氏らの実験では、ビデオや目視によりシマウマや馬・アブの行動を観察した。また、馬に黒・白・縞模様の3種の服を着せてアブの行動の違いなどを観察・比較した。
Tim Caro氏らの論文 [CC]より引用
黒・白・縞の3種の服を馬に着せる実験の結果、縞模様の服を着せたときには、服に接触・着地したアブの数が少なかった。しかし、服で覆われていない頭部へ着地するアブの数は、黒・白・縞模様のどの服を着せたときにも違いが見られなかった。
また、実際の観察でも、シマウマの体に着地したアブの数は、単色の馬の体に着地したアブの数よりもずっと少なかった。一方、周囲を飛ぶアブの数はシマウマと馬で違いは見られなかった。
これらの実験結果から、シマウマの縞模様には、遠くからアブが寄ってくるのを防ぐ効果はないが、アブが馬に接近したときに着地を妨げる効果があると考えられた。
本研究によって、「シマウマの縞模様は、主にアブなどの吸血昆虫に対する防御として進化した」という仮説を支持する新たな証拠が得られた。
管理人チャールズの感想
言われてみれば多くの人が疑問を持つであろう、「なぜシマウマは縞模様をしているのか?」というシマウマの謎の解明に挑戦した最新研究でした。実験の結果が結構はっきりしていますので、私も縞模様は、やはりアブよけに役立っているのかな、という気がしてしまいます。アブが馬の体に着地するときのメカニズムがより詳しくわかれば、「アブ防御仮説」はさらに強固になりそうですね。150年来の謎の解明まで、もうあと一歩かもしれません。
※次の記事では、先住民族のボディペイントの存在理由を、シマウマの縞と同様に考察した研究をご紹介しています
⇒ シマウマは何故しましま?先住民族のボディペイントと共通する生存上の意外なメリットとはー最新研究
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