ヒトの「言語を話す能力」の進化的起源は、オラウータンにまで遡れるかもしれない。
ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載されたダラム大学のAdriano R. Lameira氏らの研究では、オラウータンが声帯を使ってヒトの声をマネできることがわかった。
高い知能を持つオラウータン
参考動画 | tigersgoochan【動物】窓ふきをするオラウータン Pongo which does window cleaning
参考動画 | BBC Earth 靴下を洗ったり、のこぎりで木を切るオラウータン。サーカスのように仕込まれた芸ではない。オラウータンは他個体の行動を模倣したり、道具を使用する能力に優れている。野生で生まれたオラウータンの赤ちゃんも興味を持って見つめている。
参考動画 | steelycube ヘアーブラシを使うオラウータン
参考動画 | tamazoodaisuki 人間と似たしぐさでタオルを使って顔を拭いている。
言葉を話す能力の進化
言葉を学べるのはヒトだけ?
ヒトは生まれたあと周囲で話される言葉を学んで、話すことができるようになる。
しかし、ゴリラ・オランウータン・チンパンジーなどヒトに最も近縁な大型類人猿は、他個体の声を学習することはできないと従来は考えられてきた。
そのため、人類の「言葉を話す能力」がどのように進化したのかについては、現在もさかんに議論がなされている。
かつてチンパンジーに言葉を教える試みは失敗
過去に、チンパンジーなどの大型類人猿を訓練して言葉を話させようとしたプロジェクトがあったがほとんどうまくいかなかった。
当時はまだ、大型類人猿の声のレパートリーについて詳しいデータベースが利用できなかったので、直接ヒトの発話能力と比較する以外方法がなかった。
オランウータンは子音に似た声を学べる?
最近の研究では、大型類人猿の声のデータベースが充実したおかげで、新たな進展がみられる。
2015年の研究ではオランウータンが無声の子音に似た声を新たに学べる可能性が示唆されている。
声帯のコントロールが発話能力進化の鍵
声帯をコントロールできれば、意図的に声を調整して、母音のような新しい声のレパートリーを開拓できる。
母音は子音とともに話し言葉の構成単位なので、声帯のコントロールは、人類の発話能力の進化につながる重要な鍵といえる。
Adriano R. Lameira氏らの研究では、声帯のコントロールについて調べるため、さまざまな高さ・音色のヒトの声をオラウータンにまねさせて分析した。
オラウータンの「ロッキー」が実験でヒトの声をマネした!
参考動画 | DurhamUniversity 本研究の概要を解説した動画(英語のみ)
実験結果をまとめると・・・
★ロッキーがまねした声はオランウータンの通常の発声レパートリーとは物理的に違った
★リアルタイムでダイナミックに、対話的に声が出せた
★オランウータンは声帯を意識的にコントロールすることでさまざまな声が出せた
これまでは大型類人猿が新たに音を学ぶことはできないと考えられていたが、今回の研究で、オランウータンはさまざまな高さや音色の声を新たに学べることがわかった。
この新発見によって、ヒトが言語を話す能力の進化的起源はオラウータンにまで遡れるかもしれない。
管理人チャールズの感想
オランウータンの発声能力のポテンシャルの高さに驚きました。これだけ多彩な声が出せるなら、歌うことさえできるかもしれませんね。ミュージシャンの起源を垣間見た気がします・・・
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