「シャー」という雑音であるホワイトノイズは、赤ちゃんの睡眠を促したり、記憶力などのパフォーマンスを向上させる効果などが報告されている一方、場合によって赤ちゃんや脳に悪影響を与える可能性も一部の論文では指摘されているようです。
本記事では、ホワイトノイズの効果や影響についての研究・論文をいくつかまとめて簡単にご紹介します。
※管理人の目に留まった一部の研究を取り上げているだけで、包括的・網羅的なものではなく、情報が古くなってしまっている可能性もあります。今後、新しい情報が見つかれば記事の内容は更新する予定です。
そもそもホワイトノイズとは?
ホワイトノイズに近い音の例としては、昔のアナログ放送のテレビのいわゆる「砂嵐」画面の音が挙げられることがあるようです。
ホワイトノイズの辞書的な意味・定義としては、たとえば広辞苑では
すべての周波数成分をほぼ同量ずつ含む仮想的な定常雑音。
同様の周波数成分を持つ光が白色に見えることになぞらえた称。白色雑音。
と説明されています。
ホワイトノイズがどんな音か、実際に聞いてみましょう。(再生▶ボタンを押してください)
こちらの音源データの周波数スペクトルは、次の通りです。このように、どの周波数もほぼ同じ強さとなっているのが、ホワイトノイズの特徴です。
ホワイトノイズの効果やメリット
睡眠を促す効果あり!
赤ちゃん(新生児)にホワイトノイズを聞かせると、眠りにつく可能性が3倍以上になったとの報告があります。なぜ睡眠を促すのか、その理由については、ホワイトノイズが外部の他の騒音などをマスキングすることによる効果と考えられているようです↓
また、集中治療室(ICU)の患者を対象とした調査でも、ホワイトノイズによって睡眠が改善されたことが報告されています↓
(Stanchina et al., 2005より引用)
ホワイトノイズによって、環境中の他の雑音が相対的に目立たなくなるようですね。
記憶力などパフォーマンスに及ぼす影響は一様ではない?
ホワイトノイズによって、ADHD(注意欠如・多動症)など注意力が欠けている生徒では記憶のパフォーマンスが上がった一方、もともと注意力があり集中できていた生徒では逆にパフォーマンスが下がったとの報告があります↓
(Söderlund et al., 2010[CC]より引用)
注意力のない生徒(inattentive)と集中力のある生徒(attentive)でホワイトノイズの効果は反対だったようです。
他にも、ホワイトノイズが新しい単語を学ぶのに役立つといった報告や、タスクの種類によってホワイトノイズはプラスにもマイナスにも働くといった報告もあるようです。
ホワイトノイズが記憶力などのパフォーマンスに影響を及ぼす原因・メカニズムとしては、ドーパミンが関与している可能性などが考えられているようです↓
認知症の方の行動を改善できる可能性
ホワイトノイズによって、認知症を患う高齢者の方の興奮行動が改善されたとの報告があります。医療・介護の現場で応用できる可能性もあるようです↓
ホワイトノイズの潜在的な悪影響・デメリット
耳鳴りの治療にも使われるが、脳に悪影響を及ぼす可能性も
ホワイトノイズは耳鳴りの治療にも使われているようです。しかし、長期的には中枢聴覚系の機能的・構造的な統一性を損なわせ脳に悪影響を及ぼす可能性があるとして、ホワイトノイズによる治療の潜在的なデメリットを警告する論文も最近発表されています↓
※米国耳鳴り協会(ATA)の見解によれば、現時点では、音量がそれほど大きくないホワイトノイズによる耳鳴り治療がヒトに悪影響を及ぼす直接的な証拠はないため、新たな副作用などが明らかにならない限りは現状の治療を継続するのがよいだろうとのことです。
赤ちゃんを寝かしつけるために使う際の危険性や注意点
赤ちゃんが寝るのを促すために、市販のホワイトノイズスピーカーのような音を出す機械を使う際は、注意が必要なようです。
Hugh氏らの2014年の論文によれば、ノイズや音を赤ちゃんに聞かせることによって起こり得る潜在的なリスクとして例えば、
・頻脈、徐脈、無呼吸といった生理的影響
・大きすぎる音量による難聴
・自然な話声などとは違った、各周波数の強度が一定なホワイトノイズの入力により、聴覚伝導路の正常な発達が阻害される可能性
・脳や言語発達に影響する可能性
といった懸念が、動物実験の結果などから挙げられています。
より安全にホワイトノイズスピーカーを使うために、次の3つの対策が提案されているようです。
・赤ちゃんから機械をできる限り離す(近くには置かないようにする)
・音量をできるだけ小さくして使う
・できるだけ短時間の使用にとどめる(一晩中など長時間つけっぱなしにしない、タイマーで眠りについた後は消すなど)
まとめ
・ホワイトノイズによって良く眠れるようになる可能性がある
・人によって、最適なノイズのレベルは違うかもしれない
・タスクの種類によって、ホワイトノイズが及ぼす効果はプラスにもマイナスにもなりうる
・耳鳴り治療などにおいて、ホワイトノイズには潜在的なデメリットもありうる
・赤ちゃんには生理的な影響や、聴覚・脳の発達への有害な影響が及ぶ可能性もありうる
・赤ちゃんに対してホワイトノイズを使用する際は、できるだけ音の発生源と距離を取り、音の大きさを抑え、流しっぱなしにしたりせず短時間の使用にとどめた方がよさそう
【管理人チャールズの感想】
ホワイトノイズを発生させる装置(発生器)やスマホのアプリ・CDなどはすでにたくさん出回っているみたいですね。勉強に集中したり、あるいは騒音対策などをする上で、場合によっては一定の効果が得られるかもしれません。
ただし、赤ちゃんを寝かしつけたりするためにメーカー市販のホワイトノイズマシンなどを利用する場合は、使い方には十分注意した方が良いのかもしれませんね。
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