写真の琥珀内の虫は、花粉を運んだ昆虫として最も古い化石かもしれません。
米国科学アカデミー紀要に2019年11月に掲載されたTong Bao氏らの論文では、約1億年前の白亜紀に花粉を運んだと考えられる甲虫の一種が琥珀内で発見されたことが報告されています。
花を持つ植物が繁栄したのは、昆虫の送粉のおかげ?
ダーウィン以来、白亜紀に被子植物が適応放散した大きな要因は、昆虫が花粉を運んで受粉したことだと考えられてきたものの、直接的な証拠はこれまで見つかっていなかったようです。
今回ミャンマーの琥珀内で見つかった昆虫は、ハナノミ科(Mordellidae)に属する甲虫の新種で、Angimordella burmitinaと名付けられたようです。
現存するハナノミ科の種も大部分は被子植物の花粉を食べているとのこと。
参考動画:ハナノミ科(Mordellidae)の一種と思われる昆虫の映像
ハナノミを含む甲虫類(カブトムシの仲間)は地球上の全動物種の約1/4を占める大きなグループで、7万7000種以上の甲虫が花を訪れていると推定されており、被子植物の送粉者(ポリネーター)の中でも際立った存在となっているようです。
今回見つかったAngimordella burmitinaは、花粉を食べることに特化した口を持っていた他、体毛の長さや間隔が花粉を保持して運ぶのに適していたことなども確認されたようです。
A:琥珀中で見つかったハナノミの一種(赤点は昆虫に付着した花粉粒、黄点は付着していない花粉粒)B~H:拡大した花粉粒。3つの溝があるのは、真正双子葉類の花粉の特徴のようです。(Tong Bao氏らの論文[CC]より引用)
今回見つかったハナノミAngimordella burmitinaの再現図。花の形や色は想像。
(Tong Bao氏らの論文[CC]より引用)
被子植物の花粉を昆虫が運んでいたという最も古い証拠は、これまでは約5000万年まででしたが、今回の新発見によって、さらに約5000万年追加され、花粉虫媒の歴史は少なくとも約1億年前の白亜紀までさかのぼることになったようです。
管理人チャールズの感想
花粉を運ぶ昆虫の種類というと、まずハチがすぐ思い浮かびますが、甲虫類も意外と虫媒花の受粉に貢献しているのかもしれませんね。
ちなみに、農業上のポリネーターとしても重要なミツバチについては、近年、蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder:CCD)という原因不明の大量失踪現象が起きており、ダニやネオニコチノイド系農薬といった潜在的な要因について議論されているようです↓
参考動画|TED-Ed:ミツバチ大量失踪現象についてのわかりやすい解説(日本語字幕あり)
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