従来のタバコと比べて電子タバコが「安全」だという保証はないようです。
「European Heart Journal」に2019年11月に掲載されたMarin Kuntic氏らの論文では、喫煙者とマウスを対象とした調査・実験により、電子タバコが潜在的に肺・脳・血管に有害な影響をもたらすメカニズムが解明されたようです。
アイキャッチ画像クレジット:European Heart Journal
電子タバコとは?
電子タバコ(画像クレジット:TBEC Review[CC])
日本呼吸器学会の見解によると、新型タバコの種類・違いは次のように整理できるようです。
・液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ
※液体(リキッド)には、ニコチンを含むものと含まないものの 2 種類があるようですが、日本では、法的な規制により、ニコチン入りリキッドは販売されていないとのことです。
〇非燃焼・加熱式タバコ Heat-not-burn tobacco
・葉タバコを直接加熱し、ニコチンを含むエアロゾル吸引するタイプ
・低温で霧化する有機溶剤からエアロゾルを発生させた後、タバコ粉末を通過させて、タバコ成分を吸引するタイプ(電子タバコに類似)
アメリカなどで若者の電子タバコ使用が急増
参考動画|ABC News:アメリカではフルーツ・メンソール・ミントなどの風味(フレーバー)付き電子タバコを使用する高校生が多く、健康影響への懸念などから政府が電子タバコを一部禁止する計画を発表。
若者の電子タバコ喫煙が増加しているようです。
たとえばアメリカの高校生では、2011年に1.5% (22万人)だった電子タバコ喫煙者が、2018年には20.8% (305万人)にまで急増したとの報告があります(米国疾病予防管理センターのレポート)。
一方、健康影響の危険性への懸念などから、インド、ブラジル、シンガポール、メキシコ、タイなどではすでに電子タバコは禁止されているようです。
アメリカでも、電子タバコによる肺疾患や死亡例などの健康被害が出ており、懸念が高まっているようです。
電子タバコが肺、脳、血管に悪影響を及ぼすメカニズム
今回、Marin Kuntic氏らの研究では、喫煙者とマウスを対象とした調査・実験によって、短期間の電子タバコ喫煙であっても内皮の機能不全や酸化ストレス増大など体に悪い影響が及びうることが判明し、その過程でNOX2という酵素が関わっていることもわかったようです。
↑電子タバコが肺、脳、血管に悪影響を及ぼすメカニズム(画像クレジット:European Heart Journal)
「電子タバコは従来のタバコよりも毒性が低く健康的だ」という主張や、「電子タバコは禁煙の方法として有効だ」という主張については、それらを裏付けるデータは不足しており、従来のタバコと比べて電子タバコが「安全」だという保証はない、と論文の著者らは警告しています。
業界との利益相反の問題
また、電子タバコの有害性や健康影響の評価について、タバコ業界が関わる研究では無害との結果が報告される率が高いなど、業界との利益相反が生じていることを指摘した論文も最近発表されています↓
今回のMarin Kuntic氏ら論文では、特に子供や若者たちを健康リスクから守るために積極的な対策をとるべきであり、電子タバコは従来のタバコと同じように重要な健康リスク要因として認識されるべきだと主張されており、電子タバコ喫煙者の増加に対する懸念が表明されています。
本記事が何かしらの参考になりましたら幸いです。
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