子の性別を産み分けるための、簡便な方法が新たに開発されたようです。
米科学誌「プロス・バイオロジー」に2019年8月に掲載された梅原 崇氏らの論文では、X染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子を、遺伝子活性にもとづく運動性の違いを利用して分離することによって、人為的に子の性別を決定できる新しい方法が発表されています。
男の子?女の子?性別はどのように決まる?
参考動画|TED-Ed:さまざまな動物の性別決定の仕組み・原理をわかりやすく解説(日本語字幕あり)
ヒトなど哺乳類では一般的に、性染色体がXXの場合は女の子、XYの場合は男の子となります。母親はXXとなっていてX染色体しか持っておらず、父親はXYですので、子供の性別は父親の精子の性染色体がXかYかによって決まります。
そのため、子供が男の子になるか、女の子になるか、その確率は基本的に50%となります。
他の動物では、遺伝子ではなく環境によって性が決まる種もいるようですね。
今回の論文で発表された新たな「産み分け」方法
速度の違いを利用してX精子とY精子を分離!
性染色体のXとYでは遺伝子が異なりますが、これまではX精子とY精子に機能的な違いはないと考えられていたようです。
ただし、X精子とY精子の運動性の違いについては、これまでの研究で、
・pH(ペーハー)が低かったり(酸性)、温度が高い条件ではY精子の方が急速に運動性が低下
・逆に、pHが高い(アルカリ)条件ではX精子の運動性が低下
することなどが報告されているとのことです(例えば、Oyeyipo IP et al. 2017)。
今回のマウスを用いた研究では、薬剤処理することによって、このXとYの遺伝子の違いが、X精子とY精子の運動性の違いとなって現れたようです。
↑化学処理によって、X精子(右)のみで運動性(速度)が低下した(梅原 崇氏らの論文[CC]より引用)
このような運動性の違いを利用することで、X精子とY精子を従来よりも簡単に分離することに成功したようです。
これらの分離した精子を選択的に体外受精させることで、80%以上の確率でオス・メスを産み分けることができた、とのことです。
今回の実験はマウスで行われましたが、すでにウシでは体外受精で、ブタでは人工授精により雌雄の産み分けに成功するなど、他の哺乳類への応用もすすんでいるようです。
管理人チャールズの感想
精子による子供の性の産み分けについて、占いや迷信だけではなく、科学的な根拠・エビデンスが存在したんですね。今まで知りませんでした。
ただ、今回の新しい手法を人間に適用することは技術的に可能だとしても、安全面や倫理面などではまだ慎重な議論が必要かもしれませんね。
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