職場の部屋が暖かくなると、女性の仕事の生産性が上がる可能性があるようです。米科学誌「プロスワン」に2019年5月に掲載されたTom Y. Chang氏らの研究では、室内の温度を操作できる環境で男女の認知パフォーマンスの違いを調べた結果、数学や言語のテストでは、室温が高くなるほど女性は高いパフォーマンスを発揮した一方、男性では逆にパフォーマンスが低下する傾向がみられたようです。
参考動画|ABC7:本研究の概要を報じたニュース動画(英語のみ)
女性が一般に男性よりも高い室内温度を好むことは、過去のいくつかの研究ですでに知られていたようです。しかし、温度に対する認知パフォーマンスの反応の男女差については、これまで調べられていなかったとのこと。
室温を操作して、男女のパフォーマンスの違いを調べる実験!
今回、Tom Y. Chang氏らの研究では、室温を操作できる環境(約16~33℃)で、543人の大学生を対象に、数学や言語に関するテスト、認知反射テスト(CRT)を実施しました。
数学テスト:電卓なしで、2桁の数字5つを足し算する問題
言語テスト:与えられた10文字のアルファベットから、できるだけたくさんの単語を作り出す
認知反射テスト:「バットとボールが合計で110円。バットはボールより100円高い。ボールの値段はいくら?」といった感じの問題
制限時間内により多くの正答を提出できるほど、パフォーマンスが高いといえます。
実験結果:数学・言語テストでは、女性は室温が高いほどパフォーマンスが向上!
このうち、数学テストと言語テストでは、
★女性の場合は、室内の温度が高い方が、より高いパフォーマンスを発揮できた
★男性の場合は、逆に、室内温度が高いとパフォーマンスが下がる傾向がみられた(有意差はなし)
一方、
★認知反射テストのパフォーマンスについては、男女ともに、室温とは関係がなかった
という結果が得られたようです。
数学(Math)、言語(Verbal)、認知反射テスト(CRT)の男女パフォーマンスと室温の関係(Tom Y. Chang氏らの論文[CC]の図を引用)
温度上昇に伴う女性のパフォーマンス上昇は、男性のパフォーマンス低下よりも著しかったようです。
たとえば女性の場合、数学のテストでは、室温が1℃上がるごとに正答数が1.76%増加する程度のパフォーマンス改善がみられました。
参考までに、2018年のアメリカのSAT(大学進学適性試験)の数学テストを受けた高校生の男女パフォーマンス差は約4%とのことです。
このような結果から、室内の温度は、単に男女で快適さの基準が違うだけではなく、男女の生産性や認知パフォーマンスにも異なる影響を及ぼすことが示唆されました。
本研究の結果を踏まえると、男女が混在する職場・オフィスなどでは、部屋の温度を現行の基準よりも高く設定することで、会社全体の生産性が高まるかもしれない、と論文の著者らは述べています。
管理人チャールズの感想
温度が高いほど、一部タスクで女性のパフォーマンスが高まるらしいという、素朴ながら大変興味深い研究でした。
職場や学校などの最適な温度設定については、構成員の性比や個々人の特性を考慮した上で、納得いく形で決めることができれば理想的でしょう。
ただ、全員に完全に適した温度を一つに設定することは不可能でしょうから、各自服装などで調節したり、あるいは、電車での弱冷房車のように、空間的に分離していくつかの温度を設定するなど、いろいろ工夫できる余地はあるのかもしれませんね。
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