ゲノム編集・CRISPRとは?図や動画でわかりやすく簡単に原理・応用例や倫理的問題を解説

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ノーベル賞候補ともいわれたCRISPR/Cas9ゲノム編集技術。この衝撃的な最新テクノロジーは私たちの社会や生活を大きく変えつつあります。英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に2018年5月に掲載されたレビュー論文などを参考にしながら、ゲノム編集について簡単にまとめてみました。まず最初にとてもわかりやすいアニメーション動画を2つご紹介します。

※当記事執筆者はゲノム編集の専門家ではありませんので、学術的により正確・厳密な情報を求められる方は、記事最後に記載している論文など一次資料を直接ご覧下さい。

ゲノム編集・CRISPRの簡単な原理や応用例・倫理的問題をわかりやすく解説した動画

ゲノム編集は、農業分野、がんや遺伝子治療といった医療分野など幅広い領域での応用が期待されています。一方で、親が望むように自分の赤ちゃんの遺伝子を改変するデザイナーベビーの倫理的問題などについても激しく議論されています。こうした遺伝子工学・ゲノム編集の簡単な原理や応用例・問題点などをやさしく理解できる、わかりやすい動画をまず最初にご紹介します。詳しいメカニズムよりも、ざっくりと全体像を把握したい方はこちらの動画がおすすめです。

Kurzgesagt – In a Nutshellの動画「遺伝子工学はあらゆるものを永久に変えるーCRISPR」アニメーションによる簡単でわかりやすい説明で、CRISPRを中心とした遺伝子工学の幅広い話題に触れています。日本語字幕あり

※動画中の日本語字幕について
・狭義では「遺伝子組換え」と「遺伝子編集」は違いますが、ここでは区別していないようです。
・細菌とウイルスの戦いの箇所で「しかし生き残ることもある / 生き残ったのは / 反ウイルスシステムがあったからだ」という下りが出てきますが、おそらく正しくは「しかし生き残ることもある / こうして生き残った細菌だけが、最も効果的な反ウイルスシステムを発動できる」という意味かと思われます。

CRISPRのメカニズムを説明したアニメーション動画(MIT)

【マサチューセッツ工科大学(MIT)マクガヴァン脳研究所の動画】 CRISPR-Cas9遺伝子編集のメカニズム・原理についてわかりやすく解説したアニメーション動画です(英語のみ)。

ゲノム編集(遺伝子編集)とは?

「遺伝子組み換え」から「ゲノム編集」の時代へ

人類ははるか昔から作物や家畜の交配などを通して生物の遺伝子を改変してきましたが、直接DNAを操作するようになったのは比較的最近のことです。1970年代に発達した遺伝子組み換え技術では特定の遺伝子を生物に導入することが可能になりましたが、DNAの特定の位置を狙って組み込むことはできないなど、正確性や効率性に難がありました。

その後1996年にZFN(zinc-finger nuclease)、2010年にTALEN(Transcription activator effector-like nuclease)、さらに2013年にCRISPR/Cas9と呼ばれるヌクレアーゼ(=DNAを切断するはさみ)が報告され、DNAをより正確な位置で切断することが可能となりました。ゲノム編集時代の幕開けです。

ゲノム編集の原理:DNAの切断と修復のメカニズムを利用

ゲノム編集の原理(The CRISPR tool kit for genome editing and beyond Mazhar Adli https://doi.org/10.1038/s41467-018-04252-2 [cc] の図を改変)

ゲノム編集では、ヌクレアーゼ(はさみ)によってDNA二本鎖を切断したあとに続いて起こる、2種類のDNA修復機構を利用しています。上図の通り、①非相同末端連結 または ②相同組み換え修復 によって、特定の遺伝子を破壊したり目的の遺伝子を挿入したりすることが可能になります。

CRISPR/Cas9とは?

CRISPR/Cas9システムの模式図

2013年に報告されたCRISPR/Cas9では、もともと細菌がウイルスから身を守るための免疫システムだったものを利用しています。「Cas9」というDNAを切るハサミと、どの場所を切るのかを決めてハサミを導く「ガイドRNA」が協調して働きます。CRISPRではガイドRNAをデザインするだけで、より簡単に、ほぼあらゆる遺伝子領域を編集のターゲットにすることができるようになりました。また、複数の遺伝子を同時に改変することもできます。従来の手法よりも安価で効率的に標的の遺伝子(DNA)を切断して自由に編集することができるため、新たなゲノム編集の手法として急速に普及しています。

CRISPRの応用例(アニメーション動画:Nature video)

参考動画:nature video ”CRISPR: Gene editing and beyond”(英語のみ)DNAを切断しない「第2世代」のゲノム編集についてわかりやすく解説している。

ゲノム編集は「第2世代」へ

上述したDNAの切断と修復を利用したゲノム編集の時代から、さらに進歩した技術が現在開発されつつあります(「第2世代」のゲノム編集)。例えば上の動画で説明しているように、

CRISPRのCas9(はさみ)に細工を加えるなどして応用すれば、

・DNAを切断することなく標的部位に特定の酵素を運んで、一塩基レベルのより精度の高い編集を行う

・遺伝子の翻訳を調節する

・蛍光タンパク質を取り付けることで、特定の遺伝子の位置やDNAの3次元構造を視覚化する

といったことが可能になるようです。

2017年にはヒトの受精卵にCRISPRゲノム編集を用いて遺伝病の原因遺伝子を修正したとの研究が発表され、話題になりました。さらに2018年末には、ついに中国で世界で初めてゲノム編集により赤ちゃんが誕生したとの報道があり、デザイナーベビーなど倫理的問題に関する議論を巻き起こしています。

CRISPRの他の応用例の1つに「遺伝子ドライブ」があります。マラリアを媒介する蚊などを絶滅させる可能性さえ持つテクノロジーです。遺伝子ドライブとは何?という方は次の記事をご覧ください。

⇒ 遺伝子ドライブとは?原理・メカニズムの要点を簡潔に説明(動画・図説あり)

しかし、狙った場所以外のDNAを意図せず損傷させてしまう「オフターゲット効果」という現象が知られているなど、CRISPRゲノム編集の応用・実用化にはまだ課題もあります。また、技術的には生物兵器の開発などにも利用できるため、安全上のリスクも懸念されています。

テクノロジーは科学者たちの努力により確実に進歩していきますが、それをどのように用いるかは私たち次第です。

【主要参考文献】

・The CRISPR tool kit for genome editing and beyond Mazhar Adli  https://doi.org/10.1038/s41467-018-04252-2
・Genome engineering using the CRISPR-Cas9 system FA Ran et al. https://doi.org/10.1038/nprot.2013.143

・1. 部位特異的ヌクレアーゼを基盤とするゲノム編集技術 山本卓ら https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsv/64/1/64_75/_pdf

※当記事は新しい情報などを元に今後も更新する可能性があります。

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