脳で機械を直接操作するBMIで将来「心のプライバシー」が問題に?最新動画集

BMI(ブレインマシンインターフェース)など神経科学技術の急速な進歩によって、他人の脳にアクセスして情報を収集したり、他人の脳を操作できるようになる可能性がある。他人に勝手に心を読み取られないための社会基盤が必要だ。

学術雑誌「生命科学、社会、政策」に今年掲載されたMarcello Ienca氏らの論文では、神経科学の急速な進歩に対応するため、「心のプライバシー権」など新たに4つの人権を提唱した。

脳を介した新技術の応用例

脳波でドローンをコントロール

参考動画:フロリダ大学が公開したドローンレースの様子

すでに2016年には、脳波でコントロールするドローンレースが行われた。

麻痺患者が脳から直接文字をタイピング

参考動画:スタンフォード大学による麻痺患者への応用例

体は麻痺していても、脳の運動野はアクティブだという。そこに小さな電極を埋め込み、個々のニューロンの電気シグナルを感知してコンピュータで読み取っている。

ロボットアーム(義手)を脳に直接つないで触覚を感知

参考動画:DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)はロボット義手をヒトの脳につないで触覚を感知できることを初めて示した。

fMRIによる脳のスキャンの応用例など

・fMRI(機能的磁気共鳴画像法)による脳のスキャンでうつ病やアルツハイマー病を診断

・指紋やパスワードに代わる個人の認証ツール(特定のキーワードに対する脳の反応の個人差を利用)

・fMRIで脳を分析することによる「ウソ発見器」(従来より高精度)

・fMRIによる脳のスキャンによって、被験者の政治的思想を推測

・脳のある領域の活性から犯罪者の再犯率を予想

など様々な実用化例・アイディアがある。

※脳波のモニタリングや操作については古くから特許も存在しており、研究の歴史は長いと思われる

ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)の将来

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)とは脳と機械を直接つなぐ技術だ。

今年に入って、Facebookは脳から直接文字入力できるインターフェース(BCI)を開発中であることを発表し、起業家イーロン・マスク氏は新会社「Neuralink」を立ち上げ、脳とコンピュータを直接つなぐことを目指している。

EmotivやNeuroskyといった企業はすでにスマホやコンピューターとつなげる日常用途のワイヤレス・ヘッドセットを販売しており、脳波を利用した神経デバイスは、いずれキーボードやマウス・音声デバイスに取って代わる可能性もあるという。

倫理上の懸念

こうしたテクノロジーは医療や日常生活のあらゆる分野で大いに役立つことが期待される一方で、既存の法的枠組みでは対処しきれない新たな倫理的問題が懸念されている。

参考動画:TED「新しいブレインコンピュータインターフェース(BCI)」

将来は脳さえあれば肉体はいらない?テレパシーや記憶・感覚情報の共有・VRへの応用など、人間の生活が劇的に変化する可能性について言及している。

4つの新しい人権

Marcello Ienca氏らの論文では、こうした神経科学の急速な進歩に対応するため、新たに4つの人権を提唱した。心の中は、個人の自由を守る最後の砦だと言えるかもしれない。

1、自由に認識する権利(または「心を自分で決定する権利」、the right to cognitive liberty)

新しい神経科学のツールを利用して自分の心の状態を変えたり、逆にそれを拒んだりできる権利。

2、心のプライバシー権(the right to mental privacy)

現代では、ほとんどあらゆる個人情報がプライバシーの危機にさらされている。脳についての個人情報を保護してくれる特別な規則はまだない。つまり脳内盗聴・思考盗聴は法的に規制されていない。

3、心の完全性の権利(the right to mental integrity)

脳がコンピュータのようにハッキングされ、他人に操作・洗脳される危険がある。記憶の選択的消去や回復も将来的に問題となる可能性がある。

4、心理的な一貫性の権利(the right to psychological continuity)

脳への刺激・介入によって、個人のアイデンティティ・嗜好性・考え方などが改変されてしまう危険がある。自分自身を保つ権利。

管理人チャールズの感想

脳の情報を直接利用できるようになれば、テレパシーとかリアル「サトラレ」現象が本当に現実のものになるかもしれませんね。他人による操作や個人情報の収集はすでに十分行われているでしょうが、遺伝子にせよ脳にせよ、ヒトの根源的な部分を直接操作できるようになるというのは興味深いですが、やはり恐ろしくも感じてしまいますね。思考盗聴のようなテクノロジー犯罪に対処するための法的枠組みについては、早急な議論が必要でしょう。

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主要参考文献・出典情報(Creative Commons)
Ienca, M., Andorno, R. Towards new human rights in the age of neuroscience and neurotechnology. Life Sci Soc Policy 13, 5 (2017).  https://doi.org/10.1186/s40504-017-0050-1

※当記事は新しい情報などを元に今後も更新する可能性があります。

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